社会
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社会 2011年03月12日 17時59分
フジに遅れをとるNHK原発報道 その2
フジに遅れをとるNHK原発報道 その2 NHKは巻き返したのか? 日付が変わって12日(土)午前3時過ぎーー 経済産業省の海江田大臣、続いて枝野官房長官のそれぞれの会見が行われた。 今度もフジがいち早く枝野会見を生中継したが、先ほどとは若干違い、NHKも解説員がその詳しい情報を伝えようと試みていた。 まずは、フジの報道によると、福島県内のすべての原発の炉心の水位は保たれているらしい。又先ほど危険ということだった福島第一原発の水位も燃料棒の上部3.4m上まで水位がある、という続報も、両会見の後に報じられた。 しかしそのいっぽうでNHKは、この「安全だ」、という点にはあまり触れず。 すなわち、海江田会見の内容であった、「同・福島第一原発“1号機”の炉心の周囲を守る鋼鉄性・ひょうたん型の格納庫内の圧力レベルが通常の4から6に上がっている(8で格納庫が崩壊する危険状態。)ので、格納庫内部の圧力を下げるために、放射性物質を含む格納庫内の水蒸気を外に放出する可能性」の点について、フジよりも詳しく懸念を報じていたのだ。 NHKアナは、「でも放射性物質を放出するんですか?」というように突っ込み、解説員は、「外部につながる排気筒にフィルターがいくつかあり、それで放射性物質を取り除きながらの作業になる」としながらも、放射性物質のレベルが人体に影響は無い、というところまでは言及せず。 NHKとしては、あくまで注視していきたい、という報道姿勢を保ったように見受けた。 痛ましい被害が続々明らかになっているが、このように引き続き国民に真実だけを伝える報道をも、各局で続けてもらいたいものである。
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社会 2011年03月12日 17時00分
原発の危機報道 フジテレビに完全敗北したNHK
「11日午後4:30の時点で、福島第一原発の炉心の燃料棒を冷却する装置がすべて働かなくなったので、(自衛隊の電源車などで)冷却水を確保する作業を国家を挙げて遂行している」 昨夜、枝野官房長官がおおよそこのような内容の会見を行った。 この“緊急事態宣言”を受けて、真っ先に専門家に電話インタビューを敢行したフジ。専門家の回答は以下のようにショッキングなものだった。 「一刻を争う事故であり、6時間も経ってしまった現在、原発の建屋内部ではもうメルトダウンは始まっているだろう…」 本来、このような情報はNHKが先に報道してしかるべきではないだろうか。 枝野氏は、続いて午後10時前にも、国としての情報整理ののちの正式会見前に、自らの単独判断でいち早く、もう一度報道陣の前に立った。 すぐさまカメラを切り替えるフジ。枝野氏は半径3km圏内の住民に避難指示を出すとともに、 「3つある炉心のうち、ひとつ(2号機)の炉心の冷却が既に出来ておらず、現在もその状況が続いていることがわかった」 という大事な情報を、何よりもまずは端的に伝えに来たのだった。 枝野氏はこの時 「炉心の外には」放射能は漏れていない、と言った。 なぜか先ほどの会見とは違い、記者たちの質問の音声が消されている…。 いずれにせよ、あらためて、メルトダウン(燃料棒が冷却されず、水蒸気爆発を起こすこと。金属製の建屋の外に放射能が漏れる。これが言わずと知れた“原発事故”であり、チェルノブイリと同様の、被害最終形態である。)の一端の既発生をも想起させるような会見内容だった。 しかしなぜか、NHKはこの緊急会見を一切映像として流さず、このような緊迫した状況を伝えるキャスターの言葉も一切無かったのである。 いっぽうのフジはというと、会見に前後して逐一、「燃料棒が露出しそうだ」、「どれだけ冷却水の水位があったかわからず、冷却水の減るスピードもわからないので、時間的な猶予の点ははっきりわからないが、当初予想される最悪の放射能漏れの事態が、半径3km圏内という範囲なのでしょう」というようにあくまで冷徹に解説を交えつつ、視聴者にわかりやすく納得のいくような報道をしていたのが印象的だった。 今回の地震で、誰にとっても身内らの安全が最も心配なことだろう。しかし、ではいったいそのために本当に重要な情報は何か?、という優先順位をNHKは間違っていなかっただろうか。 ここまでのNHKの原発事故に対する報道姿勢は、弱腰に思えるのだが…。
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社会 2011年03月11日 21時50分
12日、13日の中央競馬開催が中止
11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響により、3月12日(土)、13日(日)の競馬開催(中山・阪神・小倉競馬)が中止されることがJRAのHPで発表された。また、JRA全施設における今週の発売・払戻業務も中止するという JRAのHPには、日本中央競馬会理事長の土川健之氏の「謹んで災害のお見舞いを申し上げます。このたびの東北地方太平洋沖地震により、被災されました皆様に対しまして心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早く復旧されることをお祈りいたします」とのコメントも掲載されている。 また、今後の詳細については、決定次第、JRAホームページ等にて発表するという。
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社会 2011年03月11日 19時00分
性犯罪者にGPS
2010年の強制わいせつ事件認知件数が全国最悪となってしまった大阪府が、性犯罪の前歴者らにGPS端末の携帯を義務づける条例制定を検討している。 この条例はすでに宮城県が検討をはじめているが、何かと論議を呼んでいるようだ。 性犯罪の特徴として、被害者が恥ずかしさや復讐を恐れて訴えでないことが少なくないことや、訴えた後での調査や法廷などで、再びつらい思いをすることなどから、訴えをしないことも多く、正確な数字がでないということがある。 そういった中ではあるが、再犯が多いと思われている性犯罪だが、他の凶悪犯罪に比べて、決して再犯率が高いとはいえない。 再犯率が高くもないのに、性犯罪者のみにGPSを付けるということの裏には何があるかというと 「性犯罪被害者の恐怖や心の傷等を思いやってのこと」 という答えが出てくる。 しかしそれだけだと、殺人や放火、強盗といった他の凶悪(重大)犯罪被害者の恐怖や心の傷はどうでもいいのかということになる。 当たり前だが、殺人未遂の被害者や殺人被害者遺族にも、恐怖や悲しみ、心の傷は残る。放火や強盗の被害者にも残る。 そういった被害者の方々のことを考えれば、犯罪加害者にGPSを付けるのは性犯罪者のみということでは済まなくなってくる。 また、再犯率の高い犯罪といえば、窃盗や覚せい剤といったものがあるが、これらの犯罪者にもGPSを付けるべきなのか? という議論も生まれよう。 「犯罪者の人権など考える必要なない。被害者の人権を第一に考えよう」 という言葉もよく聞かれる。 一見、ごもっともな意見なのだが、この意見が暴走すると、犯罪者とされた人々は、皆GPSにより国家権力に管理されてしまうという事態になりかねない。 これはこれで恐ろしいことではないだろうか? いまや親という権力者は、我が子という被支配者に対してGPS端末のついた携帯電話を所持させて管理している。 鉄道会社では、子どもが改札を通れば、それが自動的に保護者に「いま改札を通過しました」と、報告するサービスも行なわれているという。 親は安心なのであろうが、これは本当にいいことなのかどうかと疑問になることもある。 話を元にもどそう。大阪府や宮城県が検討しているのは、性犯罪に限ったことなのだ。性犯罪というものが、殺人や放火以上に、人間の心の琴線に触れ、感情的になるからこそ、このような検討が行なわれているのだろう。 この性犯罪者への制裁にかんしては、普段冷静な人でさえ、「ちょん切ってしまえばいい」などと、感情的になりがちなのだ。 だからこそかえって冷静になりつつ検討が必要なのではないだろうか?巨椋修(おぐらおさむ)(山口敏太郎事務所)山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/
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社会 2011年03月11日 17時20分
宮城県北部で震度7を観測
11日午後2時46分、三陸沖を震源とする地震があり、宮城県北部で震度7を観測、さらに同午後3時15分にも茨城県南部などで震度6弱を観測する地震が起きた。 気象庁は北海道から関東地方までの太平洋岸に大津波警報を発令。福島県相馬市、岩手県釜石市で津波が確認された。 JR東日本は新幹線と首都圏の在来線全線で、東京メトロも全線で運転を見合わせている。 携帯電話各社では、災害が発生した地域の家族や友人、知人の安否確認手段として、災害用伝言板サービスの利用を案内している。 (写真はJR高田馬場駅)
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社会 2011年03月11日 11時45分
愛知県豊田市発! 「とよたどら焼き たわわ」
愛知県豊田市は西三河地方に位置する市で、県内における中核市となっている。トヨタ自動車が本社を置く企業城下町として世界的に有名であり、愛知県下最大の面積を持っている。 工業都市のイメージが強い豊田市で、地域生産地域消費を目的とし、豊田市で生産された様々な生産物や資源(主に農産物や水産物)を使用することで「地元の活性化に少しでも貢献できないか」と考えられた新商品の和菓子が開発された。その中身には、季節に合った豊田市産の食材を使用し、より多くの消費者に和菓子を楽しんでもらうことを目的とした。 このたび、豊田市産たまごを100%使用し、中身には豊田市産いちごとミルククリームがタップリ入った「とよたどら焼き たわわ(1個160円)」が3か月限定で販売された。「とよたどら焼き たわわ」はやや膨らんだ円盤状のカステラ生地(または小さめのパンケーキ)2枚に、ミルククリームといちごをタップリ挟み込んでいる。 いちごはまさに今が旬で、ほかの品種にはない「ダントツの甘さ」が特徴の豊田市産いちごである。豊田市で主に生産しているいちごの品種は、日本一の生産量を誇る「とちおとめ」や「ゆきひめ」であるが、最近では静岡県が発祥の品種「章姫(あきひめ)」にも力を注いでいる。豊田市産いちごの最大の特徴は、鮮やかな赤色と大きいこととその甘さで、糖度を高水準に保ったまま酸度のみを抑えているため、甘味がより際立っている。さらに大粒の果実をつける特性まで持っており、女性や子どもに根強い人気があるといわれている。いちごは基本的にハウス栽培が主流である。7月から9月までは苗づくりなどの準備期間にあて、9月に定植してからは早いもので1か月ほどで実をつける。 「とよたどら焼き たわわ」が販売されているのは、愛知県豊田市竹生町にある昭和38年からの創業の老舗「お菓子処 花月」である。「季節を和菓子で感じる!」というコンセプトと理念でこだわりの和菓子を長年作り続けている和菓子店である。すべて手作りで、鮮度にもこだわり、自慢の自家製餡で作った和菓子などと数多くの種類を取り揃えている。栗きんとん(1個160円)や栗おはぎ(1個130円)は人気商品で、ほかにも味噌を使った三河名産の花舞(1個120円)もある。(「三州の河の住人」皆月 斜 山口敏太郎事務所)参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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社会 2011年03月09日 12時30分
司法試験の受験回数制限で日弁連が対立
司法試験の受験回数制限をめぐり、日本弁護士連合会で対立が起きている。日弁連では「法曹養成制度の改善に関する緊急提言」を3月中に開催される理事会で決定して政府に提出する予定である。しかし、提言内容に批判的な弁護士もおり、波乱が予想される。 発端は宇都宮健児・日弁連会長が1月11日付で法曹養成検討会議(栃木敏明座長)に緊急提言案を諮問したことである。「法曹養成制度の改善に関する緊急提言(案)」2月4日版では法科大学院の定員数大幅削減や司法修習生の給費制の維持などを提言する。表面的には会長選挙で主流派閥の山本剛嗣氏を破って歴史的な当選を果たした宇都宮会長の改革に沿うものである。 しかし、細部には異論がある。最大の批判は司法試験の受験回数制限についてである。現在の司法試験は法科大学院終了後、5年以内に3回までという受験回数制限が存在する。この受験回数制限について提言案では5年5回への緩和を求めるものの、制度自体は以下のように合理的と評価する。 「受験回数制限制度自体は、司法試験がプロセスとしての法曹養成の理念の下、法科大学院教育の成果を確認する試験として位置づけられていることからも、合理性を有するものであり、今後も維持されるべきものである」(「緊急提言(案)」4頁) これに対し、逆に受験回数撤廃を主張する弁護士も多い。千葉県弁護士会では受験回数制限の撤廃を求める決議を採択した。そこでは以下のように批判する。 「受験回数制限はいわゆる受け控えを生み、法曹志願者にとっての不安材料の一つになっているが、学習進度は人それぞれであり、そもそも回数等により一律に受験制限を行うことに合理的根拠は見出し難い」(「司法試験合格者を1000人以下に減員すること等を求める決議」2011年2月11日) 「緊急提言(案)」は「未確定版につき、会内限り」「取扱注意」と印字されているが、自らのブログで批判する弁護士も現れた。坂野智憲弁護士は以下のように批判する。 「受験回数制限の撤廃は、受験生は当然のこととして、おそらく9割方の会員が支持すると思う。それと真っ向から反する緊急提言を行うようでは日弁連に明日はないというべきだろう」(仙台 坂野智憲の弁護士日誌「日弁連法曹養成制度の改善に関する緊急提言(案) 『受験回数制限は今後も維持されるべき』だって」2011年3月3日) 緊急提言は内容だけでなく、手続きも批判されている。一般会員が知らない内容が単位弁護士会にも照会なく決定されてしまうことを非民主的とする。 緊急提言の眼目は司法修習生の給費制の維持と見られている。ある司法修習費用給費制維持緊急対策本部メンバーによると、提言案には給費制本部の要請があったという。給費性の維持を最優先課題とし、それ以外の問題を犠牲にする政治的打算が働いたとする。(林田力)
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社会 2011年03月08日 17時30分
賢い自動車の買い方
近年、不況のあおりで新車が売れない時代だと言われている。都会のように交通の便の良い地域とは異なって、地方で交通の便の悪い場所に住んでいる人間にとって、自家用車はなくてはならない存在である。 新聞の折込チラシにはよく中古車のチラシが入っているが、正直高年式の自動車は、新車とさほど変わらない価格で売られている。中古車を買うのは博打と同じだと知人が言っていたが、外見は綺麗な自動車でも、内部はボロボロの場合が多い。 知人のKは金銭的に新車を買う余裕がなくてずっと中古車だけを乗り継いでいるが、中古車の場合は製造後10年を過ぎると信じられない場所が壊れると言う。彼の自動車は製造後12年の中古車で、昨年9万キロを走っていると言うので、タイミングベルトを交換したばかりだ。先日、いきなりKの乗っている自動車のエンジンのキーが抜けなくなったという。Kは力まかせで抜いたが、今度はエンジンを始動させるためにスターターにキーを差し込んでもキーが回転できない。最後には修理に来てもらって見てもらったが、完全にスターター部分が壊れており、修理には4万かかると言われたが、仕方がなくそれを修理したと言う。昨年から今年に掛けて10万円の修理費は、経済的に余裕のないKには痛かった。今度はどこが壊れるか分からない恐怖心から、結局Kは新たに自動車を購入するために動き出した。 Kは、中古車はどこか壊れるか見当もできないので避けたく、かと言って新車を買う経済力もない。結局Kは新古車を買うことにしたと言う。新古車とはその名称の通り、新車ではないが中古車でもない。その多くはメーカーの試乗車として飾られており、走行距離も僅か数キロの自動車もある。 Kの購入した新古車は23年製造の、走行距離は僅か5キロだった。外見は新車と同じで、内装もシートにはまだビニールが掛けられていた。驚くのはその価格である。新車だと車両価格が950,000円の物が、店頭販売で895,000円で、更に決算セールで僅か695,000円で購入できたという。しかも、新車と同じ5年のメーカー保障がついて、5年以内のメンテナンスも無料だと言う。当然、新車と同じく車検も3年付く。 現在、Kは自動車の納入を待っている状態だと言う。新古車という、新車でなくて中古車でもない自動車。場合によってはかなりお買い得だ。(藤原真)
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社会 2011年03月07日 14時30分
郵政事業のチグハグさ 犠牲になる非正規社員
日本郵政グループの郵便事業会社が、3月末で契約切れとなる非正規社員の契約更新をしない雇い止めによって、2000人規模の人員削減を行なう見通しだ。同社には約15万3000人の非正規社員がいるが、人減らしで経費削減を目指す。 おかしな話である。郵便事業会社は昨年12月、非正規社員のうち約6500人を正社員化したばかりなのである。それであれば、正社員化しなければよかったのだが、これは政治主導で、やりたくなくてもやらなければいけなかったのが実情。 郵便局会社は11年度の事業計画で営業損益が約110億円の赤字になる見通しを立てており、非正規社員の雇い止めの背景には経営不振がある。郵便物の減少、宅配便・ゆうパック事業の不振…。 ゆうパックは昨年7月に旧ペリカン便と統合したが、これがスムーズにいかず、お中元時に遅配を起こし、信用を失墜。客離れにつながった。旧ペリカン便とトータルして見た場合、引き受け数は減少した。これを受けて、郵便事業会社はゆうパック事業のサービス縮小を決断。受付翌日の午前中に配達するサービスを、6月から一部地域で縮小する方針。このサービス見直しに伴い、追加で5月末で非正規社員を雇い止めする意向だ。雇い止めの対象となるのは、10年5月以降に雇用契約し、ゆうパックの仕分けや配達、コールセンターの業務に携わっている非正規社員の一部。統合時には、旧ペリカン便の非正規社員を吸収しており、これまたチグハグな印象をぬぐえない。 経営不振となれば、犠牲になるのは非正規社員であるのは世の常ではあるが、今回、整理対象になった労働者にとっては、なんとも納得がいかないことであろう。ちなみに、日本郵便のアルバイト情報のホームページを見ると、現在も各支店では募集をかけている。どこまでいっても、チグハグだ。(ジャーナリスト/落合一郎)
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社会 2011年03月05日 14時00分
奈良の神社話その十四 奈良時代最大の法力比べ!──奈良市・辛国(からくに)神社
東大寺境内の神社についてもう一つ。大仏殿を見下ろすようにして東側の丘に鎮座する辛国神社(辛国社)には、その昔繰り広げられたという壮絶な“術比べ”が伝わっている。 『宇治拾遺物語』につづられる陰陽師・安倍晴明vs.蘆屋道満の術比べもさながら、といえるだろう。 奈良時代のこと。 都に辛国行者という凄腕の術者がいた。 行者は自分の才能を過信し、東大寺建立に尽力して初代別当となった良弁僧正と法力を争いたいと常々考えていた。 その話を耳にした帝は術を競わせようと思い立つ。 早速、二人は召し出された。 ところが、行者はあっという間に良弁の法力に屈するという有様。 「恥をかいた」と、行者は手にしていた剣を良弁に投げつけるが、念珠であっさり祓われてしまう。 次に蜂の大軍を差し向けたが、これも鉄鉢でことごとく圧殺された。 行者はついに恐れをなし、倶梨伽羅(くりから)明王の像を擁して地中へと入った。 時の人が、先の行者の剣もともに埋めたので、後世この塚を「剣塚」と呼ぶようになった。 この塚は辛国神社にあるという。 辛国神社の祭神は韓国翁。東大寺造営に力をふるった朝鮮半島からの渡来技術者たち、またはその祖神を祀るとされる。古くは「天狗社」と呼ばれており、神紋は天狗の葉団扇。大仏殿修造当時、天狗の障碍が多くこの地に天狗を祀ったとも、その天狗たちを良弁僧正が改心させ、仏法守護を約束させたことから祀ったともいう。 辛国行者こそがこの“天狗”だとの伝えもある。 こじんまりとした小社だが、内に秘めた伝説はどこまでも奥深い。二月堂への参拝前に、一度立ち寄ってみてほしいものだ。(写真「行者の伝説を残す辛国神社」)神社ライター 宮家美樹