社会
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社会 2016年01月15日 10時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 世界は強いリーダーを求めている
ロシアのプーチン大統領が昨年12月17日に、恒例の年末記者会見をモスクワで開いた。この記者会見に集まったジャーナリストは1400人にも及び、大盛況だった。メディアがそれだけ注目するのは、もちろんプーチン大統領が、“強い指導者”だからだ。 プーチン大統領は、誰の助言を受けることもなく、もちろん原稿を読むこともなく、3時間にわたってしゃべりまくった。すべて自分の頭で理解し、そして決定権を持っていることの何よりの証拠を見せた。 プーチン大統領は、1バレル100ドルの石油価格を前提に予算を組んでいたのに、石油価格が半額以下に下落したことで、財政や経済が厳しい状況におかれていることを率直に認めた。そのうえで、今後の経済成長への自信を示すとともに、ロシア軍機の撃墜以来関係が悪化しているトルコ政府に対しては、徹底的に非難の言動を繰り返した。 そして何より興味深かったのは、アメリカ大統領選挙の共和党指名候補争いで首位に立つドナルド・トランプ氏を「非常に卓越した、才能ある人物だ」と褒め讃えたことだ。 アメリカの不動産王であるトランプ氏は、共和党の指名候補争いで、いずれは消えるキワモノとみられていた。 何しろ彼の主張は、日系人強制収容を支持したり、警察官殺害犯を一律死刑にしろと主張したり、さらに最近ではイスラム教徒のアメリカへの入国禁止を提案したりといった極論に終始している。 ところが、アメリカの世論調査では、トランプ氏の支持率が共和党支持者の42%を占め他の候補者を圧倒、完全に主役となる事態になっているのだ。 実は、こうした強いリーダーを求める空気は、世界に広がっている。 12月6日に行われたフランス地域圏議会選挙の第1回投票で、排外主義を標榜する極右政党・国民戦線が、13地域圏のうち6つで第1位を獲得した。結局、第2回投票では、どの地域においても1位を獲得できなかったが、それでも「最大政党」となっているのは事実だ。 世論の「右傾化」は、日本も同じことが言える。時事通信が行った12月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比0.7ポイント増の41.2%で、3カ月連続で増加した。安保関連法案の強行で、一度は落ちた支持率が、再び上昇してきているのだ。 世の中の閉塞感が強まれば強まるほど、世間が強いリーダーを求めるということは、歴史が証明している。 もちろん、強いリーダーが国を率いれば、利害が対立する問題の国際間調整がトップ会談でできるようになるから、意思決定が迅速になるというメリットはある。 しかし、逆に怖いのは、誰かひとりのリーダーが暴走をすると、あっという間に戦争に突入してしまうということだ。 実際、トルコ軍によるロシア軍機の撃墜事件も、背後にはシリアの利権をめぐる米露対立があるから、もしプーチン大統領が冷静な判断を失うようなことがあれば、すぐに世界戦争になってしまう。 今後、第3次世界大戦の火ぶたは、案外簡単に切られてしまうかもしれないのだ。
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社会 2016年01月14日 10時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第157回 日本を「小さく」せよ!
日本国は、世界屈指の自然災害大国である。特に日本の国土面積は世界のわずか0.25%にすぎないにもかかわらず、世界で発生するマグニチュード6以上の大地震の2割は日本列島周辺で起きているという事実は深刻だ。日本列島は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、そして北アメリカプレートと、四つの大陸プレートが交差する真上に位置している。今、この瞬間に足元で大地震が発生し、われわれ一人一人が「被災者」になってしまう可能性は常に存在する。 大震災が頻発する日本国においては、国民が「分散して暮らす」ことが極めて重要になる。日本列島の各地に分散して住み、いざというときは「互いに助け合う」ことを実行に移さなければ、日本国において国民は生き延びることができないのである。 むろん、単に分散していればいいという話ではない。各地の国民が、モノやサービスを生産する力、すなわち「経済力」を蓄積する必要もあるわけだ。 例えば、2014年2月の豪雪災害で大きな被害を受けた山梨県には、除雪車が不足していた。そのため、新潟県から除雪のプロたちが除雪車とともに駆け付け、救援活動を行ったのである。当時、山梨県の近隣に「除雪サービス」を十分に蓄積した地域がなかった場合、被害がさらに拡大したことは疑いない。 自然災害発生時に威力を発揮するのは、モノやサービスを生産することを可能とする供給能力(=経済力)であって、おカネではない。どれだけおカネがあったとしても、被災者を救うための経済力が各地に蓄積されていなければ、どうにもならない。 そして、経済力を強化するためには、実は人口が「集中」していた方が都合がいいのである。人口が集中しているとは、すなわち「市場がでかい」という話になる。少ない人数を相手にビジネスをやるよりも、膨大な「市場」に対しモノやサービスを売り込んだ方が、間違いなく所得を稼ぎやすい。つまりは「GDP」が成長するのだ。GDPとは、生産者が生産したモノやサービスが消費、投資として購入された金額の総計(支出面のGDP)という意味を持つ。 経済成長を実現し、モノやサービスを生産する力を蓄積するためには、人口が集中していた方が都合がいい。とはいえ、日本国全体の安全保障を考えたとき、国民ができるだけ分散していた方が望ましい。 集中と分散。言葉としては明らかに相反する二つを両立させることなど、果たしてできるのだろうか。 実は、できる。すなわち、新幹線や高速道路に代表される、交通インフラの整備によって。 昨年暮れの12月18日、2027年の東京〜名古屋間の開業を目指して建設が進められているリニア中央新幹線で、難所とされる南アルプスを貫くトンネル工事が始まった。リニア新幹線が開通すると、品川駅から名古屋駅まで、何と40分で結ばれることになる。こうなると、事実上、東京圏と名古屋圏という経済圏が「一体化」することになるわけだ。これまでは、主に名古屋圏ばかりを標的市場としていた東海地区の企業は、「隣町に行く感覚」で東京圏を相手にビジネスを展開できるようになる。 あるいは昨年の6月、「山陰リニア整備後の40年間の累計効果は18兆7900億円で、従来型の新幹線が整備された場合も3兆3789億円の効果がある」との試算が発表された山陰新幹線が、リニア方式で実現すると、これまでは鉄道で3時間以上もかかっていた鳥取と京都、大阪の間が、30分を切る可能性すらある。何しろ、鳥取と京都・大阪間の距離は、東京〜名古屋間よりもはるかに短い。東京〜名古屋間が直線距離で260キロあるのに対し、鳥取〜大阪間が145キロ、鳥取〜京都間は150キロにすぎないのだ。 鳥取から30分で京都や大阪に行けるとなると、もはや「通勤圏内」である。鳥取の企業は、「隣町に行く感覚」で京阪地区と商売ができる。逆に、大阪や京都の企業にとっても、商圏が鳥取をはじめとする山陰地方に広がることになる。 新幹線はヒトの移動の話だが、物流面でも「市場を広げる」となると、やはり高速道路の整備も必須となる。例えば宮崎県は大消費地である福岡経済圏と、いまだ九州西側の九州縦貫自動車道以外の高速道路で結ばれていない。途切れ途切れでミッシングリンク(未整備区間)が少なくない東九州自動車道経由で、5時間近くもかかってしまう。 東九州自動車道のミッシングリンクが解消され、宮崎〜福岡が2時間程度に短縮されると、宮崎の農業の市場は一気に拡大することになる。トマトやマンゴーなど、足が早い農産物であっても、福岡県の市場で販売することが可能になるわけだ。 そもそも、わが国は今後、生産年齢人口比率が低下し、人手不足が深刻化していく。だからこそ、高速道路を建設していかなければならない。高速道路を建設し、物流の「時間」を短縮することで、各人の生産性を向上していく必要があるのだ。 さらに、高速道路や新幹線等により「日本を小さく」することで、これまで成長から取り残されていた日本の地方を各都市部の「経済圏」に組み込むことが可能になる。地方にとってみれば、いきなり「商圏・市場が拡大した」という話になり、間違いなく経済成長率が高まる。 地方の経済力が強化されていけば、例えば首都直下型地震が発生した際には、「十分なモノやサービスの生産能力」を持つ各地の日本国民が首都圏の被災者を救援してくれる。新幹線や高速道路が「日本を小さくする」ことで、首都圏の住民の防災安全保障もまた強化されることになるわけだ。 わが国にとって地方経済を成長させることは「その地域に住む住民」のみのためになるという話では決してないのである。日本全国に住むすべての日本国民の「非常事態への備え」のためにも、日本国は地方に交通インフラを整備し、日本を「小さくする」べく投資を継続していかなければならないのだ。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2016年01月13日 10時00分
小沢一郎・共産党「野党連合」が担ぎ上げる反安倍の神輿・古舘伊知郎(2)
ところが、この状況が一変したのは昨年夏から秋にかけての安保法案成立前後からだ。 民主党中堅議員がこう言う。 「野党の中でも徹底した独自路線で我が道を行く共産党が、安保法案廃棄のために現実路線に徹し、他の野党とも共闘して国民連合政府を樹立させると宣言した。今までは共産党が候補者を擁立して、その分の票が流れ、結果、自民党と野党候補が競った場合、自民党候補を有利にして当選させていたのです。しかし今後、共産党候補が立候補せず野党統一候補となれば、競り合う選挙区では与党より野党候補が有利となるわけです」 共産党の志位和夫委員長が、統一候補という現実路線に大きく踏み出した最大のきっかけは、小沢氏との共闘の意思確認だったという。 昨年8月、小沢氏の地元の岩手県で、小沢氏の右腕と言われる達増拓也知事の3選目に向けての知事選が行われた。この時、野党の民主、維新、社民、共産、生活の党と山本太郎となかまたちの5党が揃い踏み共闘を実現させた。この動きは、自民党が秘密兵器として擁立しようとした平野達男元復興大臣を立候補断念に追い込み、達増知事の無投票当選を呼んだのだ。 「5党の連携により、事前世論調査で自公擁立の平野に圧勝していたため、自民は候補者擁立を断念せざるを得なかった。一方、この選挙で小沢氏と志位氏は急接近し、以後は密談を重ね、ついに国民連合政権構想まで語り合う仲にまで発展したといわれている。小沢氏は、共産党が政権に入らない閣外協力ならば国民連合政権は誕生できると豪語したと伝えられています」(小沢氏シンパ) しかし、野党連合候補が全国的に展開できるかどうかは、いまだに微妙だ。 「連合候補擁立への最大のネックとなっているのは、民主党内の前原氏や細野氏など、どちらかといえば自民党議員より右派の存在。加えて、民主党内の共産党と相いれない各組合組織の支援議員で、これらが猛反対している。そのあたりを踏まえて、枝野幸男民主党幹事長は共産党をこう牽制しているのです。『統一候補を立てないところでは、共産党は自党候補を降ろしてもらう。だが民主党候補への積極的応援はいらない』。これは、自党のことしか考えない一方的な発言。こうした声に共産党がどれだけ譲歩できるか。その調整が最大の課題です」(民主党議員) だが、ここにきてその難調整を打ち破る新たな手法が浮上しているのだ。 「そのきっかけが、古舘の出馬への担ぎ上げなのです。古舘新党的なものが誕生すれば、野党連合に弾みをつかせる。そして民主、共産の直接連携を嫌がる流れには市民連合組織が間に立ち、野党統一候補を擁立する。この市民連合組織を全国の選挙区でどこまで作り上げられるかが勝負となる」(選挙アナリスト) 昨年12月24日、『報道ステーション』の降板発表会見で「2年前から考えていた。急に心境が変わったことではない」と語っていた古舘だが、一方で「ものすごく不自由な12年間でした。言ってはいけないこと、いいこと、ものすごい制約があった」と心情を吐露している。 「かつては反自民を標榜していたテレ朝も、今となっては安倍政権に完全屈服の状態で、安倍首相とテレ朝の早河洋会長も昵懇の間柄。そんな中、反原発、反安保を訴える古舘が慕っていた元経産官僚の古賀茂明氏が、番組出演中に“不規則発言”をしたことによりトップダウンで降板が決定してしまった。内心穏やかではない古舘に野党連合が目を付けないはずがありません」(同) 加えて、市民連合的役割を一気に担うのは、学生グループ「SEALDs」や、山口二郎法政大学教授ら市民団体が昨年暮れに発足させた「安全保障法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」だ。 「学者や学生、文化人グループなどが反安保で結束して市民連合を結成、そのグループが呼び掛けて統一候補をお願いする方式です」(全国紙記者) 打倒安倍政権に向けてのうねりは本物となるのか。
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社会 2016年01月12日 15時00分
習近平国家主席の胸三寸 中国“爆買い”倍増は夢か現か幻か…
今年も中国人による怒涛の“爆買い”攻勢が続くのか。経済界では引き続き大きな関心事だ。これを強力にプッシュするデータがある。JTBが年末に発表した2016年の訪日外国人予想は、前年比19%増の実に2350万人! まさに訪日ラッシュである。観光・流通関係者が「フィーバーは今年も続く」と期待に胸を膨らませるのも無理はない。 政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に「年間訪日客2000万人」の目標を掲げている。JTB予測は、4年前倒しで政府目標を大幅にクリアする。それどころか、日本政府観光局によると訪日客は昨年12月1日時点で初めて1800万人に達し、12月末の段階で早々と2000万人の大台を突破した可能性すらあるという。うち中国人は12月1日時点で約500万人と推定され、わずか1年で倍増となった。 それにしても中国経済の崩壊・失速が公然と囁かれる中、彼らが日本に殺到する理由は何なのか。証券アナリストは「大きく三つある」と指摘する。 「一つは円安で日本旅行の割安感が強まったこと。次いで昨年の1月に政府がアジア各国に対するビザ発給条件を緩和し、何度も入国できるようにして観光客の誘致に前向きになったことが挙げられる。3点目は免税制度を拡充させ、対象品を拡大したことです。これに飛びついた中国の富裕・中間層が日本での爆買いに走った。彼らの本物志向が強まったことで、中国のコピー商品は遠からず見向きもされなくなるでしょう」 訪日客の急増を見越し、その“聖地”ともいうべき東京・銀座界隈では免税店競争が激化している。中国資本に買収されたラオックスは銀座本店、銀座本店EXITMELSAとも中国からの買い物客で溢れているが、すでに爆買いの恩恵に浴している他社も負けてはいない。 ヤマダ電機は昨年4月、隣接する新橋に8フロアすべてが免税店という異例の出店でトラトラ参入した。東急不動産も今年の3月31日、数寄屋橋交差点の角地に開業する『東急プラザ銀座』では、ロッテが消費税だけでなく関税や酒税なども免除する都内最大級の空港型免税店を出店する。 同じく3月末には三越銀座店に三越伊勢丹HDと日本空港ビル(羽田空港の運営会社)、成田空港の免税子会社による合弁会社が空港型免税店を出店する。建て替え中の松坂屋銀座店も、開業する'17年1月には銀座地区で初となる観光バスの乗降スペースや観光案内所を設置、爆買い需要への対応を予定している。 一方、ビックカメラは日本空港ビルとタッグを組み、今年の夏をめどに羽田空港に家電製品が主力の免税店を出店する。こうした動きは東京に限らず、名古屋、大阪、福岡など主要都市に拡大している。 繰り返せば、問題は中国人による“爆買い特需”がいつまで続くかである。外資系証券の投資情報担当役員は「去年の夏に中国政府が打ち出し、世界中のエコノミストが『信じられない』と絶句した異例の株価政策が参考になる」と指摘する。 上海総合指数が大暴落し、中国経済のメルトダウンが現実味を増してきたとき、習近平政権は多くの銘柄の売買停止と、株価の暴落を助長する空売り規制という荒業を駆使して最悪の事態を辛くも阻止したのである。前出の証券役員が続ける。 「中国発の世界恐慌を阻止するためには手段を問わなかったのでしょうが、株の空売り行為が処罰の対象になること自体、先進国では絶対にあり得ません。まして事実上の市場閉鎖は論外です。東日本大震災のとき、証券界の一部に『市場を閉鎖すべし』の強硬論があったのですが、日本はそこまで踏み込まなかった。逆にいうと、習近平政権にとって上海市場での株価ショックは、東日本大震災の比ではなかった。最悪の事態を恐れたから、大国のメンツをかなぐり捨てたのです」 とはいえ、どう取り繕ったところで中国経済が奇跡的に復活する保証はない。中国が対外的に発表するデータにしても「話半分ぐらいにしか受け取らず、眉ツバ視する面々が少なくない」と中国事情に詳しいアナリストは打ち明ける。だからこそ、習近平政権が上海市場で駆使した荒業を日本での爆買いに振り向けかねないリスクを警戒し、こう指摘するのだ。 「多分、今年は1000万人の大台に迫る中国人が日本に殺到し、高額商品を猛然と買い漁るでしょう。それだけの国民が日本にカネを落とせば、中国経済は確実にブレーキがかかる。もし危機的レベルに落ち込んだ場合、習近平政権は『買い物は中国でせよ。もう日本には行くな』と厳命しないとも限りません」 これが杞憂に終わるか、それとも上海の荒業再現か。日本を席巻する爆買いのキーマンが習主席であるのは間違いない。
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社会 2016年01月12日 10時00分
小沢一郎・共産党「野党連合」が担ぎ上げる反安倍の神輿・古舘伊知郎(1)
今年夏の参院選へ向け、民主党、生活の党と山本太郎となかまたち、共産党などが協力する野党連合による統一候補擁立が、いよいよ現実味を帯びてきた。加えて今、これを加速させる衝撃情報も飛び交っているのだ。 夕刊紙記者がこう囁く。 「実は、今年3月いっぱいで『報道ステーション』(テレビ朝日系)の降板が決まっている古舘伊知郎キャスターが、小沢一郎氏らの野党連合の旗頭として参院選に立候補するという話が駆け巡っているのです。古舘降板は、自民党が『反自民の姿勢が露骨な古舘を降板させなければ何らかの制裁措置を取る』との旨をチラつかせ、それに怯えたテレ朝の幹部連中が独断で決定したという説が根強い。そのしっぺ返しとして、古舘が参院選に野党から立候補し、自民党に鉄槌を食らわせるというのです」 藪を突き蛇を飛び出させてしまったかの感がある自民党は、この動きに危機感を募らせ、対策と陣営引き締めに躍起になっているという。何より、古舘立候補の話が飛び出す以前から、自民党内には野党連合への警戒感が強まっていた。 全国紙の編集委員がこう解説する。 「民主、共産、維新、社民などは昨年暮れ、今夏の参院選の熊本選挙区に、弁護士で新人の阿部広美氏を無所属で擁立すると正式発表している。この統一候補を巡っては、安保法案に反対の各党が足並みを揃え、最後は共産党が公認候補を取り下げ実現した。同選挙区には自民党現職の松村祥史氏がいるが、この決定には大慌てで、緊迫度をマックスに上げ早くも臨戦態勢だといいます」 それもそのはず。野党がバラバラだった2010年の選挙では、松村氏が次点の民主候補に4万4000票余の差で競り勝った。しかし、この時の野党全候補の得票数は単純計算で合計すると約48万票で、松村氏の得票を9万票近く上回る計算となる。野党統一候補となれば松村氏は落選の危機だ。同様の野党統一候補は、石川県でも実現している。 では、こうした野党統一候補の擁立機運は、いつごろから芽生えだしたのか。 '13年夏、安倍政権下で行われた参院選で自民党が大勝し、改選議席を大幅に上回って31議席も増やした。この参院選では当時、「自公圧勝と言うが、野党の総得票は自公を超えている。野党が手を携えれば勝てるのに…」とも囁かれていた。 「この傾向は、最近の総選挙でも顕著でした。しかし統一候補が現実化しなかったのは、野党各党のエゴ、各議員の国会議員になりたいという思惑、また、彼らの支援組織が自分の組織だけは議席を死守したいという縄張り争いがあったからなのです」(野党関係者)
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社会 2016年01月09日 16時30分
手足が冷えて眠れない! 冬を快適に過ごすための冷え解消方法
今年は暖冬とはいうものの、やっぱり冬は寒い。これからますます気温も下がってくるでしょう。すると、手足がかじかむという症状を訴える人が増えてきます。 末端の冷え性は女性に多いと言われていますが、男性にも悩んでいる方はたくさんいます。そのせいで、夜なかなか寝付けないという深刻な症状をお持ちの方も。 こうした手足の冷えへの効果的な解消方法を、医師の小田切ヨシカズ先生にお聞きしました。■血流の悪化が冷えの原因 「人間は恒温動物であり、気温の変化によって体温が変動しないようにできています。脳が寒さを感じると、自律神経の交感神経が作用して血管を縮め、血液の流動を抑えて皮膚の表面から体温が奪われないようにします。こうした血流の悪化により、体の隅々にまで血液が行き渡りにくくなることで、手足に冷えを感じるようになるわけです。ちなみに、寒い時にガクガク震えるのは、その運動で熱を発生させるためです」■寒いと血液は腹部に集まる! 「人間にとってもっとも重要な組織が集まっているのが腹部です。この部分が冷えてしまうと、臓器の機能が低下して、体全体に悪影響を及ぼしかねません。それを防ぐため、血液を腹部に集めて体温の維持を図るのです。すると、やはり血液は末端にまで行き渡りにくくなります。手足の先に冷えを感じるのには、こうした理由もあるのです」■必須アイテムは“腹巻き” 「ですから、末端の冷えを解消するには、全身を温めるよりもまず、腹部を温めることが有効な手段となります。そこで役に立つのが、腹巻き。時代遅れな感のあるこのアイテムこそ、冷え性改善に効果を発揮します。また、首・手首・足首の3か所を温めることも大事。これらの部分は皮膚が薄く、温めればその血液がそのまま体を巡ることになるからです」■コーヒーは体を冷やす!? 「温かいものを飲んだりすることも冷え性改善には有効ですが、なかには飲んだ瞬間は温まっても、すぐに体を冷やしてしまうものもあります。その代表格が、コーヒー。逆に、紅茶は温める効果があるので、飲むなら紅茶を選ぶべきでしょう。他にも、生姜やごぼうなどの根菜にも体を温める効果が見込めます。ですから、紅茶にすった生姜を入れて、ジンジャーレモンティーなどにすると、飲みやすいし、効果はさらにアップします」 安眠を促すのであれば、やはりゆっくりお風呂に浸かること。体も温まり、副交感神経が有利になることでリラックス効果も促進。非常に良い状態で眠りに就くことができます。冷えを防いでしっかり睡眠をとって、冬を乗り切ってください。【取材協力】小田切ヨシカズ湘南育ちのサーファー医師。ワークライフバランス重視の36歳。現在、横浜の内科クリニックに勤務中。
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社会 2016年01月07日 10時00分
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世
「幼い妹たちがろくに食うものもなく、あぷあぷしている。これはつらかった。すべては雪国からくる貧困だ。何とかこの雪国の生活を豊かにしなければと思った。それが政治の道への原点だった」 新潟の一寒村から苦学力行で這い上がり、やがて「今太閤」と囃されて政界トップの座にすわり、傑出、圧倒的な指導力を発揮した田中角栄元首相は、演説の折々でよくこれを口にした。 田中角栄というこの稀代の風雲児、英雄の本質を知る上で、切り離せないのが生地、越後新潟の風土である。日本海を覆う重い鉛色の空に象徴される辛酸に満ちた風土は、長く人々の生活の困窮と忍従の歴史を刻んできた。 例えば、文政11年(1828年)刊の佐藤信淵(江戸時代後期の経世家)による『経済要録』には、次のような記述がある(原文ママ)。 「往々其児を殺害する者あり。奥州、関東諸国は殊に多し。今の世に陸奥、出羽の両国ばかりにしても赤子を陰殺すること年々六、七万を下らず。唯、越後一国は赤子を殺すこと甚だ少なく、其の代わりに女子をば七、八歳以上に至れば夥しく他国に売り出す風習とす。故に、此越の売婦は一個の物差なり」 生活の困窮は、東北、関東では“子殺し”“間引き”という風潮に発展したが、この地、越後新潟では人身売買が盛ん、“経済”の物差しだったことを伝えている。また、子供を使って乏しい生計を支えるために、「角兵衛獅子」の発祥もみている。いずれも7歳から14歳以下の子供で、親方のもと各地を転々としながら踊りでいくばくかの収入を得る。「角兵衛獅子」発祥の地である新潟県西蒲原郡月潟村の明治5年の戸数302、うち農業でかろうじて生計を立てていたのはわずか47戸。「角兵衛獅子」を中心に娘剣舞、娘手踊り、瞽女などで渡世稼業とするもの実に217戸と、何と村の70%がこの地で食えず県内外に働きに出たという記録もある。ために、ついには小作として耐えられず、農民一揆の多発数も新潟が日本一である。 一方で、信濃川の氾濫、洪水も記録にあるだけで明治維新までに実に40回。その後も信濃川をはじめとする県内一級、二級千百余の河川氾濫数、さらには地すべり数もまた他県をしのいでの日本一である。明治の元勲・山県有朋の見聞記『越の山風』には、「濁浪怒号、滿目奪々トシテ当ル可カラザル勢アリ」と、農地が一瞬にして濁流に流される凄まじい明治元年の越後平野大洪水の記録もある。 そしての雪である。都会の人間にとって雪はロマンだが、ここでは生活との戦いである。新潟の雪は、ともすれば下から降ってくる。地吹雪として下から舞い上がってくるのである。人々は誰もが口をつぐみ、前かがみに歩く。県民の多くが寡黙、何事にも控え目であるゆえんだ。豪雪ともなればトンネルや隧道もなしの時代、各所が陸の孤島と化し、助産婦を求めた妊婦は荷車に乗せられての山道を遠回りのさなか母子共に命を落とし、吹雪にあおられて山道から足をすべらせ、やはり命を落とす者も多々あった。雪崩の数また日本一であった。こうした雪の季節は12月半ばあたりから、翌年4月下旬ごろまで続く。その間、人々はひたすら身をこごめ、春の到来を待つのである。 そうした中で、大正7年5月4日、田中角栄は日本海に面した新潟県刈羽郡二田村(現・柏崎市)で生を受けた。当時の馬喰、牛馬商の父・田中角次、母・フメの次男であった。姉2人、妹4人、角栄の上に兄がいたが夭折したため実質的な長男として育った。当地では長男を「アニ」と呼び、男1人、「アニ」としての角栄は幼くして“家長”としての自覚を強いられた。ちなみに、角次は「アニ」ゆえに初め「角太郎」の名前を考えたが、フメが「私の生家の隣に“角太郎”という犬がいる」と猛反対、フメが角栄と名付けたというエピソードがある。 父・角次は頭の回転は速かったが、大酒を呑んでは大言壮語が常。時に競走馬を育てて高額賞金を夢見たり、種付け用ホルスタイン牛の輸入にも手を出したりとヤマッ気も多く、これが災いして角栄が二田尋常高等小学校に入ったころには生活の困窮を余儀なくされた。母・フメが朝から晩まで休むことなく、小さな田畑仕事でかろうじて生計を支えていたのである。 「」とは、何か。正義感があるかどうか、弱者への目配り、いたわりがあるかどうか。これを放棄した「」はあり得ない。田中角栄には、それがあった。加えて、何事にも誠心誠意、全力投球、かつ性格の陽気、明朗闊達さが、人からの圧倒的な支持と好感を得たのである。 栴檀は双葉より芳し。頭脳明晰、田中は幼少にして早くも「」の片鱗を見せつけることになる。(以下、次号)※筆者注:敬称はすべて略させていただき、参考文献は連載終了時に一括明記とします。小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。
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社会 2015年12月31日 10時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第156回 スロー・トレード
中国経済の失速が止まらない。中国共産党政府が“エンピツ舐め舐め”の数字で決定する(としか思えない)経済成長率はともかく、相手国があるために捏造がしにくい貿易統計は、悲惨な状況になっている。 中国の税関総署が12月8日に発表した11月の貿易統計(ドル建て)は、輸出が前年同月比6.8%減少、輸入が8.7%の減少であった。注目すべきは、中国共産党政府が8月に強行した人民元の為替レート引き下げの効果が全く見られないという点である。以前ならば、為替レートを引き下げれば、ある程度の輸出の増加効果があったのだが、現在は全くない。 輸出の伸び悩みについては、日本も他国のことを言えた話ではない。2012年末に第2次安倍政権が発足し、50%を超える大幅な円安が進んだにもかかわらず、日本の実質輸出は、リーマンショック前はもちろんのこと、東日本大震災前を下回る水準で低迷している。 なぜ、為替レートが下がったのに日本や中国の輸出が増えないのだろうか。もちろん、日本の場合は企業が「現地生産」を増やしたという要因もある。すなわち、日本企業がそもそも国内で生産活動を実施していないため、円安になったにもかかわらず輸出が伸びないわけだ。 とはいえ、より重大な問題は、現在の世界が「スロー・トレード」の時代に突入しているという現実である。スロー・トレードとは何なのか。 スロー・トレードとは、「実質GDPが成長しても貿易量が増えない」現象のことである。IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP成長率が平均3.1%だったのに対し、貿易量は6.6%も拡大した。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのである。 それが、2000年から2011年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5.8%成長と倍率が下がった。そして、2012年から2015年を見ると、GDP3.3%成長に対し、貿易量は3.2%となっている。ついに貿易量の成長率が、GDP成長率を下回ってしまったのだ。 経済成長率に対し、貿易の成長率が低迷する。これがスロー・トレード現象である。現在の世界経済は「外需」が総じて伸び悩んでいる状況にあるわけだ。中国が為替レートを引き下げたにもかかわらず、輸出の対前年比マイナスが続いているのも、スロー・トレード問題に起因していると考えられる。 直近の数字を見ると、世界のGDP成長率2.2%に対し、貿易成長率は2%である。過去に貿易成長率が経済成長率を下回ったことは、統計が確認される限り5回しかない。OECD(経済協力開発機構)のグリア事務総長は12月4日の記者会見で、スロー・トレードは、「いずれも最終的にリセッション(景気後退)に至った」と説明した。 ところで、なぜ今回のスロー・トレード現象は発生したのだろうか。もちろん、中国が経済失速した結果、資源分野の輸出入が減ったことにも一因がある。現在、原油はもちろんのこと、石炭や鉄鉱石などの鉱物資源の価格が世界的に低迷している。すなわち、中国を中心に需要が減ったために、資源価格が下落したわけだ。 加えて、そもそもなぜ1990年以降に、世界の経済成長率が貿易成長率を上回っていたのか、がポイントである。90年代以降、ソ連が崩壊し、中国が開放政策に転じたこともあり、世界的に「新興経済諸国における、生産能力の拡大」という需要が継続していたのだ。何しろ、旧ソ連圏や中国は人口こそ多かったものの、十分といえる技術がなかった。 生産性を決定づける国民経済の「供給能力」は、モノ、ヒト、技術に分解できる。経済の3要素は、モノ、ヒト、技術だ。 旧ソ連圏や中国は、モノ(資源など)やヒトは十分に存在したが、技術面で西側諸国に大きく立ち遅れていた。旧ソ連圏や中国と西側先進国との間には、「技術」という経済の3要素の一つにおいて、大きな「格差」が存在したのである。 というわけで、この格差を埋めようとする動きが発生し、世界的な規模で「貿易成長率」が高まっていった。具体的には、西側先進国から旧ソ連圏、中国などへの直接投資の拡大と、その後の資本財の輸出である。 例えば、日本企業が中国に対外直接投資を実施し、工場が建設される。日本企業が中国工場で操業を開始し、日本で生産された資本財が輸出される。資本財は中国工場で最終消費財に化け、中国国内ではなく、アメリカなど西側先進国に輸出される。 日中間の「技術」という要素の格差を埋めるため、日本企業の対外直接投資後に、「日本からの中国への資本財の輸出」「中国からアメリカへの最終消費財の輸出」という、二つの「貿易」が創出されるわけである。 冷戦期に日本で最終消費財まで生産し、アメリカに輸出する場合は、「日本からアメリカへの最終消費財の輸出」が発生するのみで、貿易量は中国経由よりも小さくなる。 現在、世界各国の技術格差は縮小し、さらに「永久に成長する」という幻想を振りまいていた中国経済も失速。スロー・トレードの時代に突入した。今後の日本は「貿易(輸出入)」の拡大に経済成長を「依存してはならない」時代が訪れたというのが現実なのである。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2015年12月30日 10時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 見事な采配で憲法改正への道
ついに軽減税率の大枠が決定した。'17年4月から消費税率を10%に引き上げる際に、生活必需品の税率を据え置く軽減税率の対象品目を生鮮品と加工食品とし、酒類や外食は対象外とすることが決まったのだ。 当初、財務省は生鮮品だけを対象とすることを主張した。それならば財源は4000億円で、財源も手当てできるとした。しかし、公明党は、食料品全般への適用を譲らなかった。 この主張は、経済的にみると正しい。なぜなら、お金持ちは生鮮食品を買ってきて家で調理するが、時間に余裕のない中堅層はコンビニの弁当、そして更に時間もお金もない庶民は、牛丼を数分で平らげる生活だ。だから、生鮮品だけを対象とすると、金持ち優遇になってしまうからだ。 安倍総理は、公明党の提案を採用した。軽減税率の対象かどうかの線引きがしやすいという理由もあるが、最大の理由は、公明党に借りがあったからだ。安全保障関連法案に与党として賛成したことで、平和主義を掲げる公明党は、支持者から激しい突き上げを受けていた。総理は、傷ついた公明党に恩返しをする必要があったのだ。 軽減税率の対象を食料品全般に広げることは、安倍総理にもう一つのメリットをもたらした。国民に、総理が減税をしてくれたような錯覚を抱かせることができたことだ。今回の消費税率10%への引き上げは、5兆6000億円もの国民負担をもたらす大増税だった。軽減税率の財源は1兆円だから、結果的に4兆6000億円もの増税を課しながら、何か官邸が国民に優しいことをしたかのような印象を与えるのが軽減税率なのだ。 一方、一時は外食も含めるとされた対象品目から、最後に外食が落ちた。これで財務省のメンツも立つことになった。さらには、新聞は対象とするが、雑誌は対象としない方向だ。御用メディアには軽減税率という“ご褒美”を与え、自分の悪口を書く週刊誌は増税の対象とすることにしたのだ。 公明党、財務省、新聞の顔をすべて立て、国民にもいい顔をする。これが、今回の軽減税率で安倍総理がやったことだ。 ただ、私は来年6月に安倍総理が消費税引き上げ延期を発表する可能性は十分あるとみている。日本の景気が後退過程に入っており、消費税を上げられる状況ではなくなるからだ。 総理は、今後の内閣支持率を見ながら、来年7月の参議院選挙に勝てそうであれば、そのまま今の軽減税率案で行く。もし、雲行きがあやしいとみたら、緊急の記者会見を開いて、消費税引き上げの再延期を発表するのだ。来年7月の参院選は、衆参同日選挙になる可能性も高いと私は思っている。そこで圧勝した上で、憲法改正への道を開くためだ。 軽減税率で、あれだけ財源の問題を議論したのに、政府は一転して、財源の問題を封印してしまった。その理由も、選挙までは、国民負担増に触れたくないからだ。 この見事な戦略に国民はすっかりはまってしまった。来年の選挙で与党圧勝は揺るがないと思う。そして、それからの3年間、選挙を気にせず、じっくり腰を落ち着けて、憲法改正に向かうのだ。
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社会 2015年12月29日 10時00分
2016年電機メーカー 苛烈サバイバルの非情
東芝が情け容赦ないリストラにかじを切った。冷蔵庫などの白物家電やテレビ、パソコン事業を対象に大幅な人員削減に着手、既に打ち出した半導体部門と合わせると、削減人員は実に7000人規模に膨らむ。半導体を手掛ける大分工場ではライバルであるソニーへの事業売却に伴い、1100人の社員が転籍する。 リストラの大嵐は何も国内にとどまらない。赤字が続くテレビ事業では、ポーランドやインドネシアの工場を台湾企業などに売却、エジプトの工場も合弁先への売却交渉が進行中だ。 東芝が「周回遅れ」と揶揄されるリストラに突き進むのは、粉飾スキャンダルで経営が急速に悪化したのが最大の理由。このままでは野垂れ死にしかねず、事業切り売りに活路を求めるしかないのが実情だ。言い換えれば米原発子会社ウェスティングハウスに始まる“偽装の連鎖”がなければ歴代3トップが天下に恥をさらすこともなかったし、東芝自体が集中砲火を浴びることもなかった。市場関係者は冷ややかに言う。 「これで室町正志社長が株主訴訟の対象に加えられるとか、3トップともども刑事責任を問われる事態になれば目も当てられない。もう一段のリストラ=事業売却は必至で、中国企業などがホクソ笑んでいますよ」 そんな事態を回避するための先手か、パソコン事業では富士通など国内メーカーと合弁会社を設立する動きがある。白物家電においても、投資ファンドの日本産業パートナーズが画策するシャープとの“弱者連合”案など、水面下の動きは確かに活発だ。 そのシャープも、限りなく視界ゼロという点では負けていない。主力の液晶パネル事業は官民ファンドの産業革新機構がジャパンディスプレイとの統合を目指しているが、その際に債権放棄を求められる公算が大きい銀行は「台湾の鴻海精密工業や韓国のサムスン電子への売却をもくろんでいる」(金融筋)というからまだ目が離せない。 同社の迷走地獄は筋金入りで、2015年の9月28日には大阪の本社ビルを家具会社のニトリHDに売却。その2日後には希望退職に3234人の社員が応じたことが明らかになった。会社が計画した3500人には及ばなかったものの、関係者をあぜんとさせたのはその“フォロー”。11月には全社員を対象に役員20万円、管理職10万円、一般社員5万円と金額を定めて自社製品購入の“特別社員販売セール”を始めたのだ(1月29日まで実施)。事実上のノルマとあって「社員はブーイング一色だ」とシャープ関係者は打ち明ける。 「赤字の山ということもあって市場には『こんなことで年越しできるのか』と危ぶむ向きがいる。これで難破船ネズミを決め込んだ早期退職組がホッと胸をなで下ろすようだと、残った社員はもう悲惨です」(証券アナリスト) 苛烈リストラといえば、その末に“復活”を成し遂げたのがソニーである。'15年9月中間期には1159億円の最終黒字を確保し、5年ぶりで中間期黒字を果たした(前年同期は1091億円の赤字)。経済メディアは称賛するが、現実にはそう褒められた内容ではない。 ソニーは過去12年間で13回に及ぶ驚異的なペースで早期退職募集を行っており、この間に7万人に及ぶ社員が会社の将来に失望して永別している。同社は高給優遇で知られただけに、浮いた人件費負担を考慮すれば、これまで5年間も赤字を垂れ流してきたこと自体が問題なのだ。 ソニーと並んでリストラ路線を突き進んできたのがパナソニックだ。財務が急速に悪化したのに伴い、'12年には東京・御成門の東京パナソニックビル(旧東京支社)を売却。翌'13年には東京支社として保有していた東京汐留ビルを売却した。この間には3万人超の人員削減も行っている。 結果、'15年9月中間期では1113億円の最終利益(前年同期比37.6%増)を確保した。一足早いリストラで東芝、シャープとの違いを見せつけた格好だが、パナOBは今後への不安を隠さない。同社は米テスラモーターズと提携し、ネバダ州に総額5000億円を投じて電気自動車用電池工場を建設する。うちパナは約2000億円を拠出し、テスラ向けの独占供給を目指している。 「ところが韓国のLG化学がテスラに急接近し、パナ排除の動きを見せている。もしはしごを外されたらパナは大ダメージを被り、リストラ効果が帳消しです」(パナOB) 日立は過去5年間で4万人余が飛び出した。三菱電機は「1000人程度」(シンクタンク)と少ないが、電機メーカー受難の時代だけにどこに落とし穴が待っているかは分からない。果たして2016年はどんな風が吹くのか。電機メーカー経営トップは内心、冷や汗ものだろう。
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