実に的確な試合分析である。最初に言った「四球からの失点」とは、4回表の巨人の攻撃を指していた。先制したのは、巨人。ヤクルトは3点を追う3回裏に集中打が出て同点に追いつき、なおも得点圏の二塁に走者を置いていたが、「あと一本」が出ず、逆転には至っていない。同点で試合の流れはヤクルトに傾き掛けたが、その直後の4回表、巨人が得点を挙げ、それが致命傷になったというわけだ。
小川監督が的確に敗因を分析できているのなら、チーム再建は難しくないはず。しかし、こんな声も聞かれた。
「小川監督は滅多なことでは怒りません。第二次政権の今、チームに『喝』を入れる役目は宮本慎也ヘッドコーチ(48)です」(ベテラン記者)
前任監督が大敗を喫し、小川監督はいわば緊急登板のようなところもあった。最初の監督就任もそうだったが、球団は「困ったときの小川さん」と捉えている。信頼されているのは間違いないが、こんな声も聞かれた。
「二軍監督も経験していますが、『ホトケの小川さん』とも呼ばれていました。滅多なことでは怒らないので」(プロ野球解説者)
指揮官が温厚だと、選手はノビノビとプレーできる。しかし、一歩間違うと、チームはぬるま湯体質になってしまう。ヤクルトは序盤戦、2ケタ連敗を喫している。小川監督の性格を知ると、接戦となった16日の巨人戦で競り負けた理由も分かるような気がするが、こんな声も聞かれた。
「第一次政権で小川監督の欠点は分かっています。だから、ニラミが利く宮本ヘッドを置いたんです。宮本ヘッドの将来の勉強も兼ねて」(選出・ベテラン記者)
第二次小川政権が誕生した昨春キャンプから、その通りだった。チームを統括していたのは宮本ヘッドで、小川監督はそれを後方から見守るといった感じだった。試合での采配、選手起用に関しては、小川監督が最終的な判断を下しているが、「選手起用、打順編成は宮本ヘッドや担当コーチの進言が、ほぼ反映されている」(関係者)とのこと。見方を変えれば、小川監督が各コーチをかばっているとも言えなくはない。
「チームは世代交代の時期でもあります。19歳の村上宗隆を4番で使い続けているのは、将来のため」(前出・プロ野球解説者)
この村上に4番としての貫禄も兼ね備わったころ、ヤクルトの逆襲が始まるようだ。村上に限らず、ヤクルトは勢いのある若手を惜しみなく、実戦デビューさせていく球団でもある。
現在は最下位。各チームとの対戦成績だが、ヤクルトは広島戦だけ勝ち越している(同時点)。連覇を目指す広島を叩き、原巨人に競り負けて…。巨人の独走を陰で後押ししたのは、ヤクルトと言えそうだ。(スポーツライター・飯山満)