2004年に発売されるや、瞬く間に消費者の支持を得た伊右衛門。その人気商品の味を何故変える必要があったのか。その理由を同社食品事業本部ブランド戦略室の塚田英次郎課長はこう語る。
「人気商品ではあるものの、夏場の売り上げがどうしても弱いなとずっと感じていました。そこで出した答えが、一つの味を追求するだけではなく、季節に応じて最も美味しいお茶を提供するブランドになろうということでした」
一年を通じて消費者に選ばれる全く新しい緑茶飲料。その開発を託された同社商品開発部の小林真一さんがその苦労に満ちた舞台裏を明かす。
「社内でも果たして基幹ブランドの味を変えていいものかという葛藤はありました。ただ、お茶について研究を重ねた結果、人は外気温によって同じお茶でも違う味わいを感じるということが分かってきたのです。同じお茶を飲んでも夏と秋では味が全く異なったのです。また茶道でも、夏は水出しで、冬は茶葉の表面を炙ってからと、四季によって違うお茶の出し方をしていることが分かりました。四季の移り変わりがあるここ日本で、伊右衛門もまた生まれ変わる必要があるとの結論にいたりました」
そうして開発された現在発売中の春バージョンは、新茶を入れて爽やかな香りとみずみずしい味わいを引き出した新商品に仕上がった。そして、今回新たに発売されることになった夏バージョンは、さらに渋みを減らして暑い季節にもゴクゴク飲むことができる伊右衛門になっているという。
同ブランドを共同開発する京都の老舗茶舗「福寿園」の茶匠、谷口良三さんは「春の伊右衛門が新茶入りなら、夏の伊右衛門は抹茶の爽やかな味わいが楽しめる一品です。夏の物は抹茶を低温の水でゆっくりと抽出しています。お茶はお湯で出した方がカテキンなどが良く出る一方で、水で出せば旨み成分が良く出るという特徴があります。夏の伊右衛門は弱めの火入れをした清々しい茶葉に、水出し抹茶を合わせることで抹茶の爽やかな香りとスッキリとした爽快感を楽しめる商品に仕上がりました」と話す。
同日には沖縄の観光名所で新商品の無料配布イベントも行われた。この日の沖縄の最高気温は35.6度。うだるような暑さのなか、街行く人々や外国人観光客らは笑顔で新しい伊右衛門を受け取っていた。