『2020年度新卒採用説明会』
▽18日 東京・後楽園ホール 観衆 約500人
平日の朝10時30分、格闘技の聖地である後楽園ホールビルの1階に、エレベーターを待つスーツ姿の学生が長蛇の列を作っていた。ブシロードグループの新日本プロレス株式会社は、3年ぶりの新卒採用説明会を18日、東京・後楽園ホールで開いた。新日本は16、17日と同所で興行を開催しており、3日間会場を押さえていたということになる。
まず通常の大会のように、『ザ・スコアー』が流れた後に、バロン山崎がナレーションを務めるオープニング映像が流れ大いに盛り上がった。続いてタカラトミーをV字回復させた手腕を買われて、昨年就任したハロルド・ジョージ・メイ代表取締役社長兼CEOがリングに登壇。パワーポイントを後楽園ホールのスクリーンに映しながら、流暢な日本語で業務内容や今後の可能性について説明した。
3年前の説明会は学生たちが新日本を“知らない”前提で構成されていたが、この日のメイ社長は「みなさんもご存知のように」と新日本を“知っている”ことを前提に話していたのが特徴的だった。これは3年前の説明会に来場した学生のほとんどがプロレスファンだったことに加え、この3年間で新日本プロレスというブランドが広まっているという感触をメイ社長自身が感じ取っているからだろう。メイ社長は最後に「みなさんと一緒にプロレスの歴史を作っていきたい」と熱いラブコールを送っていた。関係者の話によると参加者は「3年前より多かった」という。
メイ社長と入れ替わる形で、棚橋弘至がサプライズで登場。棚橋は3年前も学生にエールを送っていたが、今回は少し長めに持論を展開すると「新日本を退団したKUSHIDAは『何をしてきたかじゃなく、これから何をしていくか』と言っていました。企業も『この人材は会社で何をしてくれるか』」を見ていると思うので、面接のときには笑顔と声のトーン、自分の志を伝えていただきたいと思います」とメッセージ。
「どれだけ偉大な過去でも未来は作れない。未来を作れるのは現在。僕は若い外国人選手に“You Are Future”、キミは未来なんだって伝えてるんですけど、ここに来ているみなさんもFuture。大変ですけど、心から応援しています。新日本プロレスに入ってくれたあかつきには、すばらしいものを一緒に作り上げていきましょう」と熱いエールを送った。最後は「会場のみなさん、愛してま〜す!」と学生と大合唱して棚橋は退場した。
後半は純粋に新日本のプロレスを楽しんでもらおうと、2試合のスペシャルマッチが組まれた。第1試合は学生と世代が近いヤングライオン(若手)の海野翔太&成田蓮対辻陽太&上村優也という好カードで会場を温めると、第2試合では、ロッキー・ロメロ&YOH&SHOのロッポンギ3Kが、金丸義信&エル・デスペラード&TAKAみちのくの鈴木軍と6人タッグマッチを敢行。鈴木軍はいつもと変わらぬ暴走ファイトを展開。これには「就活」を忘れて学生たちも大熱狂。他の新卒採用説明会では間違いなく見られない光景である。試合はロッポンギ3Kが勝利を収め、大きな歓声を浴びていた。
エンディングではロッキーが「英語を覚えてください」と英語で話すと、YOHが「今の話した言葉、入社試験に出るので」と笑いを取った。続けて「ホント今日はこの場で試合ができて、新日本プロレスを見せられて、ボクたちも誇りに思ってます。それで新日本プロレスをもっと届けいから、もっと広めたくて、もっとみんなと繋がっていたいから。だからさ、俺たちと一緒に新日本プロレスの未来をつくっていきます!」と宣言。
「きょうの会社説明会を見て、受けて、『新日本プロレスに入りたいな』と思った人?」と呼びかけると、学生が一斉に挙手。「オッ! オーケー、じゃあ、約束だよ。そんなにみんなに、明日も、いい風が吹きますように!」と学生たちにエールを送ると、最後は客席に出向き学生たちとハイタッチを交わしながら、新卒採用説明会は幕を閉じた。
参加者からは「説明が分かりやすかった」「興味を持った」「新日本を作る側に回ってみたい」という前向きな意見が多かった。新日本も年々規模が大きくなっているため、選手に限らずスタッフにも若い人材が必要な時期に差しかかっている。それだけに今回の新卒採用説明会を有意義なものにしたいという狙いがあったのは確かだ。日本のプロレス・格闘技団体でここまで大きい説明会を開けるのは新日本だけ。アメリカのWWEに次ぐ世界第2位の団体力を内外にアピールする意味でも効果はあっただろう。
取材・文・写真 / どら増田