search
とじる
トップ > トレンド > 『銀魂』第40巻、人情味ある携帯メール依存症批判

『銀魂』第40巻、人情味ある携帯メール依存症批判

 空知英秋が『週刊少年ジャンプ』で連載中のSF時代劇漫画『銀魂』第40巻が、7月4日に発売された。節目の第40巻では雪山遭難編、ラブチョリス編、携帯編の3本が収録され、ギャグ中心ながら最後に人情味ある携帯メール依存症批判でまとめた。

 『銀魂』のようなギャグ色の強い作品にとって40巻もの単行本刊行は、長期連載の部類に入る。それを反映してギャグも円熟味を増している。雪山の話での将軍・徳川茂茂の嫌われ役など、お約束の展開が安定した笑いを生む。下ネタが強くなっている点は好き嫌いが分かれるものの、青少年健全育成条例改正への反感が背景にあることを知るファンからは「気骨がある」と逆に評価されている。
 『銀魂』の魅力はギャグに笑うだけではない。人情話にも感動する。ギャグや下ネタ全開の話が突然シリアスな人情話に変貌する点も魅力である。この巻では最後の携帯メールの話が爽やかな人情味を描いた。

 『銀魂』の人情話は依頼人からの依頼に対して万事屋が味のある解決をするパターンが王道である。これは北条司の『シティーハンター』にも通じる枠組みである。一方で『銀魂』には別系統の人情話として神楽の個人的な体験と精神的成長を描くパターンがある。
 それには重たい問題を抱えた依頼人の依頼解決話ほどのスケールはないものの、清涼感がある。携帯編は神楽の精神的成長がメインであるが、老人のエピソードが途中で入り、依頼解決型の人情味も加わった感動作になっている。

 携帯編の発端は神楽が携帯電話を欲しがったことである。ひょんなことからメール機能だけが使用できる携帯電話を3台入手し、坂田銀時と志村新八、神楽の携帯メール生活が始まった。3人が携帯電話を持つことで、神楽は「これで私達、いつどこにいても一緒」と喜ぶが、実質的な使用者は神楽だけであった。神楽は何をしていても、会話ができる距離にいてもメールを送る。銀時や新八からはウザがられ、十分に返事ももらえない。
 これは携帯メールで結びついていないと不安で仕方ないという携帯メール依存症への痛烈な皮肉である。その場その場の携帯メールのコミュニケーションよりも、携帯編では直接的な絆に価値を置いている。万事屋の絆と神楽の精神的成長が爽やかな感動をもたらした。

 携帯メール依存を否定する結論は納得できるとしても、携帯メール依存症の問題は教育界でも指摘されるほどの問題であり、ストレートに出すならば作品が説教臭くなってしまう恐れがある。それは少年漫画のエンターテイメントに反する。
 この点で携帯編の筋運びは巧みであった。物語の中盤ではメールの返事が欲しい女心と、返事を面倒くさがって「言わなくても分かっているだろう」という身勝手な男心を対比させた。マメにメール返信することが望ましい価値のように見せながら、どんでん返しの結末となった。

(林田力)

関連記事


トレンド→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

トレンド→

もっと見る→

注目タグ