あまり知られていないことだが、韓国では妊娠中絶手術は違法行為である。日本の場合も、刑法で堕胎は犯罪とされているが、母体保護法の条件に合えば中絶手術は可能である。これと同様に韓国でも、レイプなど望まない妊娠に関しては中絶手術が認められているため、多くの抜け道があり、実質的には形骸化しているといわれる。
ただ、法律の縛り以上に韓国社会は妊娠中絶に関して冷淡だ。まず、大きく影響しているのが儒教文化である。儒教には親や先達を敬うべきといった習わしがあるが、同時に男尊女卑的な性格があり、妊娠した子どもが女子とわかった場合に中絶手術するといった行為を禁止するために、妊娠中絶手術が違法化されたともいわれている。また、韓国に広く普及しているカトリック系のキリスト教思想も、中絶は罪という意識を増長させている。国力維持のため出生率低下を防ぐ目的も、中絶手術の違法化にはあるようだ。これらの複数の理由が入り交じり、韓国には中絶手術違法論が深く根付いている。
さらに、中絶手術は「非道徳的な医療行為」と規定されており、これを受けて産婦人科医らによる抗議行動も起きている。そのためリュ・ジヘの中絶手術体験の告白は、とても大きな秘密の暴露であったといえるだろう。