この間、選挙区で有権者に訴えていることといえば、世界中を震え上がらせている新型(豚)インフルエンザと15兆円規模の経済対策でライバル政党・自民党との違いを吐露している。
「経済対策は麻生内閣のバラまきにほかならない」と、民主党の代表代行・菅直人は国会で口汚く政府の政策を罵(ののし)り、「次の選挙でわが党が勝利したら、こんな政策は取らない」と言っていた。
首相・麻生太郎がやっとその気になってきている衆院の解散・総選挙を一日でも早く実現させようと迫っていたのだ。民主党の中にあっても「代表・小沢一郎の早期代表辞任が必要」としていた旧社会党系議員のほか、あくまで小沢を支えていこうとする旧小沢グループにあってもいささか小沢の言動が解せない、という声まであった。
そればかりか、自民党執行部の一部には「こんどの総選挙での政局についてはわが党にはなはだ有利」と、皮算用までしている始末。確かに皮算用も必要だと思う。公明党が都議選と衆院選の日程を空けてほしい、と与党間の“協定”にしようとしているのも、はっきり皮算用してのものである。そして、首相の麻生と民主党代表だった小沢との党首討論が行われる予定であった。しかしそれも今回の小沢代表の辞任で、ご破算となってしまった。
衆院の解散・総選挙は、待ったなしにやってくる。麻生はもっぱら“外交”と称して世界を飛び回っていた。
「国内には目もくれず外にばっかり気を使っている麻生と小沢との国民に寄せる思いの違いをぜひ出させたい」と民主党幹事長・鳩山由紀夫は、何はともあれ、それを表に出したかったのである。
この自民党と、民主党やほかの政党はカヤの外に置かれたままである。「政治は勝つか負けるか」だからほかの政党もやっとPRのために動き出した。マニフェストを前面に押し立てての行動だが、この時期、国民受けするものといえば、やはり経済対策か。
国会の会期末が6月3日に迫るなか、政府・与党は7月24日までの51日間の大幅な会期の延期を行う方向で検討に入った。
平成21年度第1次補正予算案や海賊対策法案などの成立を確実にするため、会期の延長は不可欠というだけに、9月10日の衆院の任期満了を見据えて、麻生にフリーハンドを与えているという意味合いと、経済という追い風のムードを受けてのものだ。(文中敬称略)