8日の事件直後、中央通りの歩行者天国は封鎖され、警視庁は立入禁止の黄色いテープを張って随所に警官を配備した。夕方すぎ、テープ越しに事件現場を激写していた20代男性が警官に「歩行者天国は何時に再開されるんですか?このまま再開されないこともあり得るんですか?」としつこくまとわりついた。
報道陣が路上で目撃者を囲んだ際、その姿をカメラで撮ったり、強引に体を割り込ませて聞き耳を立てていた男性がいた。友人に「おもしえれえ話聞けちゃった!これいいブログのネタだよ」と悪乗りした。別のおばさんは報道陣に取材。周囲の迷惑もかえりみず血痕に興奮していた。
JR秋葉原駅電気街口はいつにも増してコスプレイヤーとカメラ小僧で混み合っていた。こんなときまで…と最初はあきれたが、話を聞いて考えが変わった。
やや歳のいったカメラ小僧に事件目撃の一部始終を話すよう迫ったときのこと。カメラ小僧はいったん話しかけながら言葉を止めて「それよりまず、亡くなったかたのご冥福をお祈りしたいです」と言った。思わず取材・報道する側として常に心にとどめなければならないことを忘れていなかったか?と自問した。カメラ小僧は興味本位に話すことは一切なかった。
別の男性は「早く家に帰ろうとも思うんですけど、こういう事件のあとなのでもう少しみんなといたいんです」と話した。まるで自分が狙われたように怯えていた。
現場の献花台では、亡くなった方と面識のない多くのアキバ好き男女が手を合わせている。ひとくくりに“ヲタク”“アキバ系”とまとめ、まるで彼ら全体に事件の責任があるかのように白眼視する報道はあまりに軽薄ではないか。