このCMは20年後のドラえもんの世界を描いており、野比のび太役を妻夫木聡、ジャイアン役を小川直也が務めている。イケメン俳優として一定の地位を築いた妻夫木だけに、のび太役は似合わないのでは? と不安視されていたが、ネットでは意外にも好評なようで「早く次回作が見たい!」という声もあがっている。
さて、こうなってくると主人公である「ドラえもん」がどうやって実写化されるのか気になっている人も多いことだろう。かつてドラえもんはCGキャラクターとして『徹子の部屋』に登場していた過去はあるものの、実写の人物として出演するとなればこれは史上初である。
ただ、実は『ドラえもん』にはアニメになる数年前、なんと本当に実写ドラマにする企画があったという。
この企画を立ち上げたのは株式会社ピー・プロダクション。『マグマ大使』『スペクトルマン』などの実写ヒーローものを多数製作してきた特撮映像プロ。実写『ドラえもん』の企画が立ち上がったのは1972年。ドラえもんの映像企画としては一番早かったと思われ、持ち込まれたのはテレビ朝日では無くフジテレビだった。
今、考えるとなかなかのトンデモ企画に聞こえるが、原作者である藤子不二雄の両人は異様にノリノリだったようで実際に着ぐるみの雛型も製作されていたという。残念ながら、この企画は日の目を見る事が無かったが、企画書はいまだに現存しておりファンの間では伝説のエピソードとして語り継がれている。
考えてみれば、60〜70年代は子供向け特撮ドラマの全盛。『丸出だめ夫』や『鉄人28号』など様々な漫画が実写化されてきた。これは藤子不二雄作品も同様で香取慎吾が演じる30年以上前、『忍者ハットリくん』が実写されていた。ちなみこの『実写ハットリくん』は大人の俳優がそのままハットリの面を被ったかなりインパクトのある作品で、当時見ていた子供達に大きなトラウマを植え付けた。
昔から「子供漫画の実写化は当たらない」と映像業界でも言われていたが、近年では『妖怪人間べム』のドラマが着ぐるみやキャストのハマり具合で評価を得ており、やや傾向が変わってきたようだ。
「実写ドラえもんCM」の登場も漫画の実写化に自信がついた力の誇示なのかもしれない。(安永由美彦)