日本人メジャーリーグ投手の侍ジャパン合流が不可能となった。これと前後してスポーツメディアが「追加招集」の有力選手名を報じたが、福岡ソフトバンクホークスの工藤公康監督は開幕ローテーションの再編を迫られている。1月19日時点でソフトバンクから第4回WBCに参加する投手は、オランダ代表としてノミネートされたバンデンハーク1人。しかし、昨年12月の一次発表時点から千賀滉大と武田翔太は「有力」と位置づけられてきた。とくに、重量感のあるストレートと落差の大きいフォークボールを持つ千賀は、メジャーリーグ投手の辞退を受けて以降、追加招集の“筆頭候補”のように報じられている。
「工藤監督は先発ローテーションを5人でまわす指揮官ですが、常にバックアップ要員も編成しています。用心深い監督で、バンデンハークに続いて武田と千賀の両方を招集されても困らないよう、オフの間から開幕ローテーションのバックアップ要員のことを考えてきました」(プロ野球解説者)
ローテーション入りした昨季の主な先発投手は攝津正、バンデンハーク、武田、和田毅、千賀。WBCの優勝決定戦は3月22日(米現地時間)。3大会中優勝2回の日本はもちろんだが、前回大会4位のオランダも上位進出の可能性が高いため、3月31日のペナントレース開幕戦に招集されたソフトバンク投手の調整にも影響してくるのは必至で、工藤監督はバックアップ要員をいきなり開幕ローテーションで登板させなければならない。
「WBC公式球とNPB公認球は触った感覚が異なります。肉体的・精神的疲労度も高いだろうから、ローテーション1回、ないしは2回外してやらないと…」(前出・同)
その“変則ローテーション”入りすると目されるのが、新人の田中正義。そして、2人目の候補として、急浮上してきたのが松坂大輔である。
松坂は昨季最終戦に登板し、釣瓶打ちにされた。「平成の怪物も故障と年齢には勝てないのか」とファンを大きく失望させたが、16〜17年オフの間、自ら志願してプエルトリコで開催されたウィンターリーグに参加。4試合に登板し、勝ち星こそ付かなかったが、防御率2.70、最終登板では7回を投げ、被安打3安打、失点1と好投している。同リーグの成績表によれば、トータルで20イニング登板、自責点6、奪三振11、与四球数11とも書かれていた。
松坂がノーワインドアップの新投球フォームをテストしていたのは、既報通り。「ウィンターリーグでの成績」を見る限り、完全復活の太鼓判は押せないが、本人は手応えを掴みつつあるという。
同リーグ戦を現地取材した米国人ライターがこう言う。「ツーシーム、チェンジアップを多投していました。ツーシームも今まで投げてきましたが、その割合が大きくなったというか…。あと、軌道の大きいカーブを『見せ球』に使っていましたよ」
一般論として、ツーシーム、チェンジアップは打ち損じを誘うボールとされている。20イニングを投げ、奪三振数が11と少なかったのは、松坂自身が「ゴロアウト」を狙っていたからだろう。
「かつて決め球とされていたスライダーを打たれており、ストレートの球速は戻っていません。でも、ツーシーム、チェンジアップにタイミングを狂わされたバッターは本当に多かったですね」(前出・同)
第1回大会の06年、09年で最優秀選手賞に選ばれたからだろうか。松坂がバックアップ要員で結果を残せば、通常ローテーション入りも可能だ。侍ジャパンのソフトバンク投手招集が松坂を復活させてくれそうだ。