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東近江の妖怪と不思議話「中野の河童相撲」

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画像はイメージです。

 中野村(現在の滋賀県東近江市中野町)には、昔から河童が棲んでいるという噂があった。ある時、中野村の畑で度々胡瓜が盗まれる事件が発生した。酷い時には、一晩のうちに大量の胡瓜が盗まれることもあった。胡瓜は河童の大好物なので、胡瓜泥棒の犯人は河童ではないかと、村人は目星をつけていた。

 「今夜こそ、胡瓜泥棒を捕まえよう」と、村人を総動員して、畑を監視することにした。そして、夜明け前に、何処からとも無く、身の丈6尺(1.8m)の大河童が現れた。「それっ!」と、河童を取り囲んで、「胡瓜を盗むのを止めてくれ!」と村長が河童と交渉してみた。河童は「ワシと相撲を取って、勝ったら盗むのをやめてやる」と言い放ち、頭を左右に振ると頭の上の皿から水を村人に浴びせた。すると、村人の足腰の力が抜け、皆その場にへたり込んでしまった。その間に河童は胡瓜をどっさり抱え、逃げ去ってしまった。

 泥棒の正体が河童だったので、村人達は困り果てた。そこで、小脇村(現在の東近江市小脇町)に住んでいる近江で一強いという横綱の権之丞に、河童と相撲を取って欲しいと頼むことにした。村の代表が酒樽と菓子を持って、権之丞に頼みに行くと、快く引き受けてくれた。

 河童と権之丞の相撲試合に近隣の村から、多くの見物人が集まった。河童と権之丞は互いににらみ合った。行司の軍配が上がると、河童は頭を左右に振って、頭の皿から水を飛ばし出した。皿の水を被った権之丞は、たちまち力が抜けてしまい、河童は権之丞の胸を突くと、土俵の外に弾き飛ばされてしまった。「これで、畑の胡瓜は全て、ワシのものだ」と、河童は自慢げに笑った。

 「一寸、待て! 今度はオレが相手だ」と、土俵に上がったのは、見るからにひ弱そうな喜助という小男であった。「やい、河童! お前の相撲は力だけだ。技も機敏さもない。悔しかったら、オレと同じことをやって、身軽さをみせてみろ!」と、河童を挑発するように喜助は、その場で逆立ちをしてみせた。河童は酷く悔しがり、自分も逆立ちをして見せた。すると、河童の頭の皿から水は全部こぼれてしまった。皿の水が無くなると河童は無力になってしまう。そして相撲の取り組みが始まると、喜助は河童の胸をドンと突いた。河童は鞠のように土俵の外へ転げ落ちていった。それ以後、河童は村に現れなくなったという。

(写真:「ザ・かっぱ」妖怪プロジェクト)

(皆月 斜 山口敏太郎事務所)

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