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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 差別をしないは本当か

 最近、自民党の議員から“差別”と受け取られかねない発言が相次いでいる。竹下亘総務会長が宮中晩さん会への国賓の同性パートナーの出席に反対する考えを表明したり、山本幸三前地方創生大臣がアフリカ支援を巡り、「何であんな黒いのが好きなんだ」などと述べた。また、山東昭子元参院副議長も「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言している。

 一連の発言を受けて、11月28日の国会で、希望の党の井出庸生衆院議員が、こうした発言に対する総理の見解を質した。
 安倍総理は、「政府としてのコメントは控える」としながらも、「政府としてはLGBTと言われる性的少数者に対する偏見、人種差別、女性に対する偏見などはあってはならない」と、少数者への差別行為は許されないという考えを明確に表明した。こうした考えは、完全に正しい。少数者への配慮は、民主主義の基本だからだ。

 ただ、本当に政府がこうした考え方に基づいて行動しているのかについては、疑問がある。11月30日に、政府・与党が'18年度の税制改正でたばこ税の増税に踏み切る方針を固めたからだ。表向きの理由は税収確保。
 しかし、たばこ税増税が税収確保につながらないことは明らかだ。例えば、'05年のたばこ税収入は、地方分を含めて2兆2400億円だった。それが、'15年には2兆1900億円に減っている。この間、'06年と'10年にたばこ税増税をしたのに減った。増税直後は一時的に税収は増えるが、その後、禁煙が進むので、税収はかえって落ち込むのだ。

 政府も、それは分かっているはずだ。現に今回の増税案でも、紙巻きタバコ1本当たり3円の増税を目指しているが、'18年10月以降は、1年に1円ずつ増税するとしている。いきなり引き上げると、税収が落ち込むことが分かっているからだ。それでは、政府はなぜ税収が落ち込むのが分かっているのに、たばこ増税をしようとしているのか。
 私は、希望の党対策だと思う。小池百合子都知事の政治手法は、敵を作り、その反作用で浮かび上がるというもの。都知事選や都議会議員選挙では、この手法が見事に当たった。しかし、内田茂元都議の引退で、小池知事は敵役を失ってしまった。そこで、新たな敵役に選ばれたのが喫煙者だったのだ。

 東京オリンピックに向け、世界レベルの喫煙規制を敷くべく、すでに小池都政は動き出している。本当は、欧米は「屋内禁煙、屋外自由」が原則なのだが、小池知事は、屋内も屋外も、子供がいる場合は家庭内も禁煙という世界で例のない喫煙者の徹底弾圧を進めようとしている。
 これは、自民党にとって脅威だ。もし、国民のムードが喫煙者イジメ一色になったら、自民党は喫煙者と一緒に敵役にされてしまう。そこで、先手を打って自らも喫煙者イジメに一役買うことにしたのだろう。

 たばこの増税は、販売店の在庫確認や自販機の設定変更など、大変な手間がかかる。それでも4年間も時間をかけて増税をするのは、4年間にわたって喫煙者イジメを続ければ、小池知事には国政に付け入る隙を与えない、という計算があるのだろう。
 結局、喫煙者という少数派が政争の犠牲になるのだ。

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