新聞や雑誌で「女子アナ」という文字をよく見かけますね。最近ではテレビの「総バラエティー化」からテレビ局が局アナをアイドルに仕立て上げる手法が目立ちます。その結果、世間(特に紙媒体)から「アナウンサー=アイドル」のイメージが定着したように思えます。
私はそれについて違和感を抱きません。テレビの女子アナはタレントでいいと思います。が、ラジオはそうであってはいけないと感じます。そう、「テレビとラジオのアナウンサーは立ち位置が違う」と言う事。ラジオの女子アナはラジオというポジションでアナウンサーの資質が問われると考えております。
特に私たちが勤務する『エフエムたちかわ』はラジオの世界に於いても「コミュニティ」という特殊な局。地域に根ざした放送を心がけながらも日本全国にリスナーが存在する事を頭に入れ、放送するように意識しております。決して、「内輪受け」のマスターベーションにならぬように…。
アナウンサーという仕事は一見、華やかそうに見えますが、実際は泥臭い職業なのです。ラジオの場合はそれが顕著ですね。
皆さんが感じている通りで、確かに私たちアナウンサーは「前へ出たがる」…俗に言う「自己顕示欲の塊」。しかし、それは必要な事で悪い事ではありません。
事実、番組の評判が良い時は「番組の構成が良い」と言われ、逆に悪ければ、「三谷の番組はつまらない」とアナウンサーが矢面に立つ訳です。私たちは番組を盛り上げる役割をしているのですから、「前へ出て番組を引っ張る」という姿勢が不可欠。常に「一歩下がった」立場にいたら「いい番組を作る意識が無いのか」−−と局幹部はもとよりリスナーからもご指摘を受けてしまうでしょう。
分かりやすい例でいえば、某大手FM局が土曜日夕方5時から放送している番組を皆さんご存じですよね。その番組を聴いて皆さんどう思いますか? 「主役のミスター、スターン、小池さん、ミナミさん…の声がいいから番組が成立している」…とは思はないでしょう。番組が成立しているのは「あのおしゃれな(番組)設定と業界人の内緒話が面白い」から(勿論、登場人物の声は素晴らしいですよ)。同じ局が平日、深夜放送している老舗番組にしてもそうです。「J・Tの声もいいけど番組のシチュエーションが素晴らしい」「(大物俳優の)T・Mがラジオで違った顔を見せている。さすが老舗番組」…というように、「喋り手が生きるのは番組の構成次第」となるのです。
逆に不評の番組はと言うと「三谷が話しているあの番組は最低だな」…となるのです。
これがラジオのアナウンサーだと思います。番組を生かすのも殺すのもアナウンサーですが、成功したら「縁の下の力持ち」、失敗したら「私の責任」。このように、ラジオのアナウンサーとは泥臭い商売なのです。
だからこそ、やりがいがある仕事なのです。『エフエムたちかわ』では、私が自ら番組スポンサー探しに出かける事があります。もっとも、コミュニティFMならば、アナウンサーが営業を兼務するという手法は日常茶飯事。実際に喋り手がクライアントの許(もと)に出向く事で企業も安心できますよね。コミュニティFMに勤務している以上、私は営業もアナウンサーの仕事だと思っております。
喋り手、番組の質向上、そして営業…一人何役も兼務しているアナウンサーですが、だからこそ「ヤリガイ」を感じ、日々精進しようと頑張れるのです。
私は、この仕事に誇りと自信を持って、これからも皆さんに「声」を届けていきたいと思います。
(エフエムたちかわアナウンサー、エフエムたちかわアナウンススクール校長)
【三谷啓子(みたにけいこ)プロフィール】
特技・広島風お好み焼き作り(腕は抜群! と自画自賛)
趣味・国際交流ボランティア活動
(ホームステイの受け入れや留学生交流、やっぱり“人”が好き)
褒賞・2007年3月「防災・防犯無線」アナウンスの永年協力に対し、立川市長より感謝状を授与される
〜2010年から立川拘置所で全国初の所内放送をボランティアで始め、新聞各紙、TV、ラジオ、海外メディアにも大きく取り上げられ、注目を集めている〜