「山口俊(巨人)が早々とブルージェイズと契約できたことに、NPBの関係者は驚いていました。山口は巨人移籍以降、メジャー志望を公の場で発言していません。メジャースカウトもノーマークに近かったのに」(プロ野球解説者)
代理人の手腕もあったと思うが、山口が評価された点は「縦の変化球」だった。
メジャーリーグのスカウトが日本人投手を視察する際、一つの評価基準として、縦の変化球を持っているのかどうか、そして、その精度を見極めているという。つまり、フォークボールや縦に変化するスライダーを持っている山口は、「通用する」と判断されたのだ。
「山口が早々にブルージェイズと契約でき(正式契約はメディカルチェック後)、他の日本人投手はその理由を探りました。それで、縦の変化球が評価されたことが他の日本人投手にも広まりました」(前出・同)
DeNA・山崎、千葉ロッテ・石川もメジャーリーグに対する思いを抑えられなくなったのだろう。
しかし、問題はソフトバンクだ。
12月25日、柳田は契約更改を終え、記者団に7年の長期契約を結んだことを明かしている。31歳という年齢を考えれば、彼自身の言う通り、「生涯ホークス」。ソフトバンクで現役生活を全うすることになるだろう。
柳田もメジャー志望を秘めていた。柳田の説明によれば、32歳となる2020年シーズン、全試合を一軍で過ごしたとしても、海外FA権が取得できないことが分かったという。19年シーズン序盤、柳田は左足の故障を負い、38試合にしか出場していない。来季、全試合、一軍登録できたとしても、海外FA権取得に届かないのはそのためだ。しかし、
「柳田はこれまでも長期契約を結んでいました。来年で3年契約がいったん終了します。7年契約を改めて提示され、年俸も最初の5億7000万円(推定)を引き継ぎ、さらに出来高が加わるという内容で。破格の待遇と言っていいでしょう」(スポーツ紙記者)
故障し、チームに貢献できなかったシーズン後、ここまで高い評価をされれば、チームに対する愛着も深まるはず。もっとも、こんな情報が早くも聞かれた。
「現在、米球界側と交渉中の菊池涼介、秋山翔吾がまだ移籍先が決まっていません(同時点)。その辺も柳田の気持ちにも影響したようです。柳田への高い評価はホークスの他選手にも広まっています」(前出・スポーツ紙記者)
同じく、強いメジャー志望を持つ千賀滉大投手は、柳田の決断をどう思ったのだろうか。「縦の変化球」がメジャーの評価基準になることも、山口俊の移籍で聞いているはず。千賀は150キロ台後半の球速と、オバケとも称されるほど鋭角に落ちるフォークボールを持っている。柳田への高評価は、千賀にも向けられたものでもあるようだ。(スポーツライター・飯山満)