麻生首相の出身派閥は、麻生派と呼ばれる「為公会」。ありていに言って弱小派閥である。派閥力学がすべてを支配する中、弱小派閥の麻生氏が首相にまで昇り詰めることができたのは、町村派のバックアップを得られたから。その町村派のドンである森氏と、反逆児となった中川氏のいさかいが長引くことは、政権運営には大きなマイナス要因となる。
この日の町村派パーティーでは、会長の町村信孝前官房長官が「森元首相以来、4代続けて首相を輩出した。党内で最有力の集団だと自負して麻生首相を支える」と勢力を誇示。だが麻生政権を支持する森、町村両氏ら主流派と、批判的な中川氏との確執は深い。
町村派では2月5日、事実上のオーナー森氏が町村氏を会長に昇格させ、消費増税問題をめぐる首相批判で対立が決定的になった中川氏を降格する人事を決定。以来、中川氏は「私が発言すれば不協和音が生じる」と派閥の会合に出席していない。この日のパーティーにも姿を見せなかった。
「森-町村」側にも歩み寄る気配はいっさいなし。特に町村氏が4月2日の総会で、欠席を続ける中川氏の姿勢に疑問を呈するなど両氏の亀裂は大きく、派内では「修復は不可能」との見方も出ている。
7日には電柱、電線を地中化して並木道に変える街づくりを目指す議員連盟の初会合で、安倍晋三元首相の両側に町村、中川両氏が座ったが、言葉を交わさないまま中川氏は早々に退席。ここまでほころびが大きくなると、派閥分裂も真実味を帯びてくる。
一方で、この場面が象徴するように、双方をつなぐ役割として安倍氏の存在感が高まっている。中川氏に近い小池百合子元防衛相は、議連発足に際して安倍氏に会長を要請。安倍氏は麻生氏にも近く森氏との関係も良好だ。若手の一人は「『安倍派』への衣替えもそう遠くないのではないか」と指摘する。
パーティーで、乾杯のあいさつに立った安倍氏は、「これまで乾杯のあいさつは森さんだったが、『これからはおまえがやれ』ということでしょうか」と意味深長に話した。
民主党の敵失で浮き足立つ麻生氏だが、知らないうちに抱える爆弾は大きくなっていた。それでも浮かれていられるか?