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野球賭博の余波 プロ野球界は不祥事を根絶できるのか(前編)

 日本野球機構(NPB)の調査委員会が、巨人・福田聡志(32)以外にも賭博行為を行っていたとし、チームメイトの笠原将生(24)と松本竜也(22)の名前を挙げたのは、10月21日だった。
「これで(調査が)おしまいだと思うなよ。今回は一歩も二歩も遅れて(原稿を)書いたほうがいい」
 プロ野球関係者は、そうクギをさしてきた。

 福田の賭博関与が報じられ、NPBが調査委員会を立ち上げたころの話である。その後、福田に賭博を持ち掛けたとされるA氏との仲を取り持った笠原も、実際に賭けをやっていたという。また、松本の名前も新たに報じられた。松本が“疑惑の対象”となったことは、巨人首脳陣にも衝撃を与えた。松本は2011年ドラフト1位投手である。しかし、関係者の「これでおしまいではない」の言葉は、疑惑対象の選手数が増えることを指していたのではなかった。
 「いや、NPBだけの話ではないんだ(NPB内で解決できる話ではないという意味で)。今は言えない」
 10月27日、テキサスレンジャーズのダルビッシュ有(29)の実弟、ダルビッシュセファット・ファルボッド翔容疑者(26)が大阪府警に逮捕された。警察発表によれば、スマートフォンの無料通話アプリを使い、1口1万円で勝敗を予想させていたとし、掛け金は1週間で約1900万円。ダルビッシュセファット容疑者らは、そのうちの10%を胴元の取り分として得ていたそうだ。
 「今年5月、ダルビッシュセファット容疑者たちは44試合の賭博をしていたとされ、うち16試合がメジャーリーグの試合です。実兄のダルビッシュ有は今年3月に右肘のトミー・ジョン手術を受けています。弟が兄貴の投げる試合を賭けていたなんてことになっていたら、大ごとですよ」(大阪社会部記者)
 実弟逮捕のニュースはアメリカでも伝えられたが、ダルビッシュ有との関連性はどこも報じていない。

 プロ野球関連の不祥事は東京五輪の追加競技としての復活を目指す野球・ソフトボールの競技そのものにも影響を与えかねない。また、現実性はともかく、政界はスポーツ事業振興の資金集めとして、サッカーのtoto、Bigのような内容での『野球くじ』の導入も検討していた。
 NPBは「1か月以内に処分を決める」とも伝えていたが、もうひと波乱起こるかもしれない。ベテラン記者がこう続ける。
 「NPBは徹底調査するとしており、警察当局とも連絡を取り合っていると見るべきです。その調査に巨人も全面協力するようですし、厳しい処分が下されるでしょう。NPB、巨人ともに『再発防止に全力を注ぐ』ともしていた」
 プロ野球の社会的影響の大きさを考えれば、当然である。
 今回の事件が未然に防ぐことができなかったのが悔やまれる。まして、プロ野球界には1969年発覚の『黒い霧事件』を経験している。永久追放を含む19人の選手を処分した八百長事件だ。しかし、こうも考えられなくはないか…。OBを含む大多数のプロ野球関係者はマジメに暮らしている。聖人君子とは言わないが、暴力団関係者との接触には十分注意するよう教育されており、新人選手を対象とした研修会も行ってきた。

 前出の球界関係者が『NPB新人選手研修会』について、こう説明する。
 「新人選手が必ず受けなければならない講習会です。学校授業の関係などこの研修会に出られなかった選手は、次年度以降必ず受けることになっています」
 昨年ドラフト指名された新人を対象としたその研修会の中身を見てみると、『アンチドーピング活動について』、『税の意義と役割』、『薬物乱用防止について』、『暴力団の実態と手口』、『話し方、インタビューへの対応』、『先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ』の6つの講義が行われていた。午前中には野球殿堂博物館の見学も行われていた。
 「社会人として最低限のマナーを教えています。ドーピング、税金のこと、暴力団の手口についてはそれなりに時間を割いていますが」(前出・関係者)

 一般企業に就職した学生も社会人研修を受けている。企業組織の一員としての仕事内容も教えられる。企業によってその研修期間はさまざまだが、「たった1日の研修」でNPBが「成すべきことはやった」としているのだとしたら、大間違いだろう。プロ野球選手は“個人事業主”であり、最終的な責任は個人となるが、球団の組織人でもある。NPBと球団が社会人、組織人としての常識を徹底させなければならない。
 今年の新人研修でのこと。『先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ』の講義を行ったのは、山本浩二氏だった。山本氏は現役時代にともに切磋琢磨し、ライバルでもあった衣笠祥雄氏の話を切り出した。しかし、反応が薄かった。山本氏は「皆は若いから知らないかもしれないが…」と言って話を続けたが、本当に知らなかったとしたら、これから自分が働く業界のことを全く勉強していないのも同然だ。また、巨人は球団独自の新人講習も行ったが、チーム創立者であり、プロ野球の父とも称された正力松太郎氏のことを「知らない」「漢字で書けない」といったありさまだった。講師役の大森剛氏が声を荒げたが、プロ野球選手は職業意識が薄く、自分がこれから務める企業、業界の勉強をしようとしない。

 スポーツ教育とは心身を鍛えることであり、礼儀作法が重要視される。今回の不祥事は学生球界を含めた野球界全体の問題なのかもしれない。(一部敬称略、スポーツライター・飯山満)

*写真イメージ

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