進退問題の重圧と周囲の雑音でイライラを募らせていた朝青龍が、全勝ターンで上機嫌だ。
7日目には嘉風に顔面を張られてブチ切れたが、この日は人が変わったかのように冷静沈着だった。1度は立ち合いで安美錦にフライングされたが「ドンマイ」とばかりに手で合図を出す余裕。仕切り直し後は立ち合いから張られたが、一切取り乱すことはなかった。
下がることなく豪快な突き押しで対抗。あっという間に土俵際まで追い込み、左に逃げようとする相手を痛めている左腕で押し倒した。「いい相撲を取ってる」と自画自賛の圧勝劇。取組後は、右ヒザを傷めてうずくまったままの安美錦に歩み寄り、心配そうに手を差し伸べる気遣いを見せた。
前日は怒りから取材拒否だったが、この日の支度部屋では、無傷で勝ち越しを決め、引退危機を脱したことも相まって実にじょう舌。進退問題が騒がれていた序盤戦は常にキレ気味か、ダンマリを貫いてきた横綱が「一息ついた感じだね」「安心した」などと本音を漏らした。
負傷した安美錦についても「大丈夫だったかぁ?」と自ら報道陣に尋ね「いつもならすぐに立つのに…。なかなか立ち上がらなかったから、心配だな」と心やさしい一面をのぞかせた。間髪入れず「ケガは嫌だから頑張ってほしいよ」とエールも送った。
そればかりではない。帰り際にもベビーフェースな一面を披露した。大勢の報道陣がぶらさがり取材のため朝青龍について行く中、なぜか女性カメラマンだけしっかりエスコート。柄にもなくレディー・ファーストを守る律儀ぶり。
8連勝で復活Vが見えてきたことから気分上々だ。珍しく自らライバルの白鵬にも言及し「きょうは前の横綱がいい相撲を取ったから、その気迫を感じた。2人ともいい相撲をとった」と称えた。
土俵で結果が出ていることで、気分の乗ってきた朝青龍。その勢いは止まりそうにない。