ここで『プロレスEXPO 2010』が開催される。
否、このイベントの正体は、『プロレスEXPO』の仮面を被った“地下プロレス”なのであるが…!
この“ネパール地下プロレス”に招かれたメイド・イン・ジャパンの地下戦士・富豪2夢路と梅沢菊次郎も、試合開場で手厚い歓迎を受けた。二人が試合開始時刻ギリギリに会場入りすると、
「日本からやって来た“頭突き世界一”フゴフゴユメジと、“アンダーグラウンドスモーヨコヅナ”キクジローが到着しました!」
と、ご丁寧にも場内アナウンスがされる。この異例の扱いに、二人は目を丸くした。
特に“スモー・キク”の異名がネパールで定着しかけている梅沢菊次郎は、「ヨコヅナ」という響きの 国籍を問わない説得力に、新鮮な驚きを感じていた。
この日夢路と梅沢は、スペインのマーク・ハニバル相手の3WAYマッチに出場。しかし参加選手の中で、夢路と対戦予定だったイタリアのフェンリズ・ヘルストームは、直前になってから脚の骨折を理由に出場をキャンセルした。このドタキャンにも「何かある」と勘ぐりたくなってしまうのも、やはり地下の業の深さなのだろうか…。
3WAYマッチは結局、梅沢がハニバルをボディプレスでピンフォールし快勝。詰めかけた4000人強のネパールっ子たちは、彼らのこれまでの人生では遭遇し得ない「125キロの大男」のファイトに大興奮。「ヨコヅナ!」の声援が鳴り止むことはなかった。やはり「スモー」「ヨコヅナ」の響きと、そこから生まれる畏敬の感情は、万国共通のものなのだ。
しかし、事件はメインイベントで勃発した。
メインのカードは、“ネパールの力道山”ヒマラヤン・タイガーに、元WWEスーパースターのビッグ・ヴィトー。言うまでもなく、リング上で繰り広げられるアメリカとネパールの“戦争”である。
ここで夢路と梅沢は、ヒマラヤン・タイガーの真のカリスマぶりを知ることとなる。
ヒマラヤン・タイガーの一挙手一投足に、大観衆から地鳴りが沸き起こる。
「地鳴りのような大歓声」などとという生やさしい比喩ではない。
人々の裸の感情が、文字通りの地鳴りと化しているのだ。
日本のプロレスが完全に忘れ去ってしまった光景が、このネパールの地に存在した。
国民の娯楽の王様としてプロレスが君臨し、リング上のトップスターは、国民の代弁者として、彼らの激情を表現する。
まさにヒマラヤン・タイガーは、ネパールの力道山だったのだ。
その国民の英雄を、“悪いアメリカ人”が痛めつけにかかる。
ビッグ・ヴィトーが凶器を持ち出し、レフェリーのブラインドをついて殴りかかる。
その時。
大観衆が、一斉にペットボトルとイスを、リングめがけて雨あられのように投げ入れた。
完全なる暴徒と化した群衆に向かって、ついに軍隊が出動する。
警棒を持った兵士が、暴れる観客めがけて次々殴りつける。
軍隊と民衆が殴り合う、ニュース映像でしか見たことがない風景。
この修羅場のきっかけを作ったのは、紛れもなくヒマラヤン・タイガー。
日本のサムライ・夢路と梅沢は、“ヒマラヤの力道山”の真の恐ろしさを、この瞬間に初めて知ったのだった。
カトマンズの暴動を伝える現地ニュース(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=AC-LqblIjuo&feature=player_embedded
そしてこの未曾有の大暴動の中、闘う男たちの国境を超えた友情が芽生えていた。
飛び交うイスの雨の中、“国民の敵”ビッグ・ヴィトーを、夢路と梅沢が身を挺して守り抜いたのだ。
自らの命を救ってくれた(間違いなく、その瞬間ヴィトーは死を意識したはず!)このサムライたちの男気にヴィトーはいたく感激し、命からがら辿り着いたホテルで、夢路と菊沢を酒の席に誘った。
「今すぐ飲もう!」
なんと、三人とも試合コスチュームのままである。ビッグ・ヴィトーは、命の恩人たちを前にして、そこまで感極まっていたのだ。
「カンパーイ!」
そして、コスチュームのまま杯を交わした三人。その瞬間、日本のサムライタッグ・富豪2夢路&梅沢菊次郎のチーム名が決まった。
その名も「カンパイ・ボーイズ」。
地下プロレス『EXIT』公式サイト
http://www7.plala.or.jp/EXIT/
梶原劇画で伝承された「地下プロレス」が、この日本に存在した! 闇の闘いを伝える『EXIT』とは何か!?
http://npn.co.jp/article/detail/97320773/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(1)
http://npn.co.jp/article/detail/54205265/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(2)
http://npn.co.jp/article/detail/71648266/
(山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou