「○○君の写真をとってよ」
「ああ、いいよ」
私は二つ返事でOKしました。○○君というのは同級生の男の子で、家庭的に幾つか不幸があったものの、頑張っている人物で、学校で一番かっこいいと下級生に人気があったのです。言われるままに撮影し、カメラごとその同級生と後輩に渡しました。数日後、学校では、軽いパニックが起こっていました。
「あれ?なにかあったの?」
翌朝、登校した私は不審に思い、友人に聞いてみました。すると、顔をこわばらせながら、友人たちはこう言ったのです。
「あの写真さぁ、いや、見ないほうがいいかも」
そう言われると気になるものです。
「ええ、何よ!見せてよ」
「駄目!とんでもないことになっているから」
どうやら、私が撮影した写真が心霊写真だったらしく、友人たちは写真を隠してしまいました。
「なによ、オーバーな」
私はふてくされましたが、数か月後、その写真と奇妙な形で再会するのです。その写真は、一部の友人の悪戯で当時発売されていた心霊漫画「ハロウィン」(現在は廃刊)の心霊写真コーナーに投稿されてしまったのです。
「なに!この写真」
雑誌を友人たちに見せられた私は愕然としました。雑誌を持つ手が震えました。自分の撮影した男の子の写真は、首に巨大なカンザシが貫通したとんでもない心霊写真だったのです。
「いや、見たくないわ」
私は雑誌を放り投げ、その写真から目をそらしました。それ以来、その写真を見る事はなくなっていましたが、4年後21歳になった私は、三度その写真と遭遇してしまうのです。早くして結婚した私は、夫とジャスコに買い物に出ていました。ビデオのワゴンセールがあり、3本ビデオを買うと1500円というものでした。私が主人に話しかけました。
「ねえ、これ買わない?」
「プロレス二本に、あと一本は、ええと、あれ?ギボアイコのビデオがあるじゃん」
主人と私は嬉しそうに三本のビデオを購入しました。そして、その夜ビデオを再生するとギボさんの恐ろしい声の解説に乗り、あのカンザシの写真が映し出されたのです。
「あああぁぁぁ、この写真、私が撮影したやつだ」
「なんだって、まじか」
この時、一緒にビデオを見た夫が、山口敏太郎というペンネームでホラー作家になるのは、それから3年後の話です。
(監修:山口敏太郎事務所)