「残り試合、全部勝て!」
南信男・球団社長からそんな檄が飛ばされたという。
「経営陣から見れば、2位と3位では大きな違いがあります。2位に上がればクライマックスシリーズ第1ステージの主催権が生じ、チケット収益を得られます。3位では対戦チームを儲けさせるだけですから」(プロ野球解説者)
「全部勝て!」の檄の真意は、営業的理由だけだろうか。
ヤクルト3連戦、今季最後の神宮球場での試合前、阪神首脳陣は“不穏な動き”も見せていた。試合前の選手宿舎に中村勝広GM、高野栄一・球団本部長が表れた。ひと足先に宿舎入りしていた南社長と顔を合わせるなり、別室へ…。“緊急トップ会談”が開かれたのである。
「中村GM、高野部長は多忙で、チームに帯同しているわけではない。2人のスケジュールを考えると、フロントトップが集まれるのはこの日しかなかったということでしょう」(球界関係者)
約2時間後、南社長が一部報道陣に囲まれた。同社長は虎ナインや和田監督のいる神宮球場へ向かう途中と説明し、報道陣を振り切ろうとした。ドラフト、FAなど来季の戦力補強について話し合ったとのことだが、詳細は教えてくれなかったという。
「和田監督が会談に加わっていないことが気になります。和田監督が最優先すべきはヤクルト戦を万全で迎えることですが、球宴休み中、坂井信也オーナーとの会食に和田監督は呼ばれており、その席で後半戦の戦い方、来季の補強など、意見の擦り合わせが行われました」(同)
南社長の檄が伝えられたのは、その直後だった。前出のプロ野球解説者がこう言う。
「和田監督の去就を扱った関西系メディアは、『球団は和田監督と契約更新したいが、本社がそれを認めない可能性がある』というニュアンスです。球団スタッフと本社で意見が食い違うなんて考えにくい。和田監督を切る大義名分は巨人3連敗(優勝戦線脱落)で出来上がったと見るべき。あとはファンも新監督招聘を臨んでいるという空気を作りたいんです」
昨季も終盤戦の勝負どころで大失速した。ファンは和田体制を「不甲斐ない」と思っているかもしれない。だが、このまま行けば、和田監督は3年間でAクラス入り2回、優勝争いも繰り広げている。新監督を迎えるには、“もうひと言”が必要なのである。
南社長は報道陣に囲まれたとき、「何も決まってないけど」の言葉を繰り返していたそうだ。『トップ会談』に加わっていない和田監督への配慮だろうか。それとも…。