不服申し立てはできず、判決は即日確定。華井判事補は法曹資格を失った。弾劾裁判で裁判官が罷免されたのは、08年にストーカー規制法違反で有罪が確定した宇都宮地裁の判事以来、47年の制度開始から7人目となる。
谷川裁判長は「人を裁く立場の裁判官としてあるまじき行為」と非難した。判決は、華井判事補が任官直後の11年春から逮捕される12年8月まで、盗撮を少なくとも20回繰り返したと認定。「常習的な盗撮行為で多くの女性の人権を侵害した。裁判員制度の導入で司法が身近になり、国民からの信頼も高まる中、強い非難に値する」と指摘した。
また、谷川裁判長は大阪市のパチンコ店放火殺人事件(09年7月)で、死刑を言い渡した裁判員裁判判決に関与したことにも触れ、「職責の重さを自覚していれば、専門家に相談するなど卑劣な行為を止める機会はいくらでもあった。超えてはいけない一線を超えたことへの非難の程度は極めて高い」と述べた。
華井判事補は昨年8月29日午前8時半頃、大阪府の寝屋川市駅付近を走行中の京阪電車車内で、30代女性のキュロットスカートの下にスマートフォン(多機能携帯電話)を差し入れて、動画機能を使って撮影した疑いで、府警寝屋川署に逮捕された。所持していたスマートフォンには、盗撮したとみられる複数の女性の下着の動画が残っていた。華井判事補は3月11日の弾劾裁判初公判で訴追内容を認めていた。
失職した華井判事補は中央大学を経て、名古屋大学法科大学院を修了し、09年9月に司法試験に合格。司法研修を経て、11年1月、大阪地裁に判事補として任官されたが、その直後から盗撮行為を繰り返していたことになる。
(蔵元英二)