まずは新章に突入した冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』。8日発売の44号に掲載された第319話「抽選」では十二支をモチーフにした幹部キャラクターが登場した。十二支をモチーフとする点は桐山光侍の『NINKU -忍空-』と同じであり、大半のキャラクターのビジュアルが動物と関連付けられている点は尾田栄一郎の『ONE PIECE』の王下七武海に類似する。
しかも、幹部キャラの登場シーンは「どべ〜ん」の擬音付きで、これも『ONE PIECE』の「どーん」を連想させる。さらにストーリーは自己の過去作品の『幽遊白書』の魔界統一トーナメント編を想起させる展開になった。
一方で幹部キャラが動物と関連付けられる理由は、コードネームの付与者に心酔するあまり、自らを干支に因んだコードネームに似せようと自発的に努力した結果と説明する。ここには「なるほど」と思わせるオリジナリティがある。
他作品のパロディでは定評がある空知英秋の『銀魂』も負けてはいない。同じ44号に掲載された「ストレートパーマに悪い奴はいない」は主人公以外の記憶が改変されたという展開である。これは久保帯人の『BLEACH-ブリーチ-』に登場する月島秀九郎の能力「ブック・オブ・ジ・エンド」を連想させる。
4日に発売された『BLEACH』の単行本・第52巻では、その月島の能力によって主人公・黒崎一護が追い詰められる。身近な人々の記憶が操作される絶望感や激しい怒りをシリアスに描いている。これに対して『銀魂』は類似した状況をギャグテイストで描いた。
圧巻は西尾維新原作、暁月あきら作画の『めだかボックス』である。43号に掲載された第116箱「俺は」では漫画の主人公論が展開され、週刊少年ジャンプの歴代漫画の主人公の特徴が語られる。言及された作品は『キン肉マン』や『北斗の拳』『ドラゴンボール』などの人気作品、『キャプテン翼』や『SLAM DUNK』、『テニスの王子様』のようなスポーツ物、『電影少女』『ヒカルの碁』などに至るまで幅広い。
原作者の西尾維新は小説の登場人物に「長い間ご愛読ありがとうございました」との台詞を語らせるほどのメタフィクションの名手である。それは『めだかボックス』でも健在で、その漫画論も数多くの漫画の読みこなしに裏打ちされたものになっている。『北斗の拳』のケンシロウを「愛」、『電影少女』の弄内洋太を「ピュア」、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の緋村剣心を「優しく」と特徴づけることは表層的な作品理解では得られない結論である。
他作品を読みこなし、消化することで自らの作品を豊かにしていく。そのような好循環が働いている『週刊少年ジャンプ』から目が離せない。
(林田力)