『完投』を個人別に見てみると、則本昴大(24)が『9』でダントツの1位(30試合登板/うち2試合は救援)。埼玉西武・岸孝之が『5』で、沢村賞・金子千尋が『4』と続く。セ・リーグでは菅野智之、メッセンジャー、能見篤史、大瀬良大地、大野雄大、井納翔一、山口俊がトップを分けたが、僅か『3完投』である。
則本は昨年オフ、“異例の複数年契約”を交わした。プロ野球界の複数年契約は、FA権の取得に絡めて交わされるのが一般的だ。FAに関係のない、プロ2度目の契約更改で“複数年”を提示されたのも、9完投が大きく影響してのことだろう。
9完投のうち、完封勝利が『7』もある。事実上の完投と言っていい試合が、あと1つある。昨年8月29日の対福岡ソフトバンク戦だった。試合は延長戦に突入したため、則本は9回を投げきったが、カウントされなかった。8回を投げきったところでクローザーにバトンタッチした試合が『6試合』もあった。
また、12球団全体で見てみると、完投試合数が『則本一人』に及ばないチームもあった。ソフトバンク、北海道日本ハム、千葉ロッテ、広島東洋、中日、東京ヤクルトがそれだ。完投試合数の現役1位は山本昌の『79』。NPB最多は金田正一の『365』と遠いが、1989年、日本記録となった『11連続完投勝利』が則本によって塗り替えられる可能性は高い。
NPB関係者がこんな秘話を教えてくれた。
「実は、昨年の沢村賞は金子で決まりましたが、即決ではなかったんです。同賞受賞の条件である7項目のうち、金子は『完投10以上』、投球回数200イニングの2項目をクリアしていません。成績は申し分なく、金子は同賞に相応しい活躍をおさめましたが、則本が、同じく基準条件である15勝に届いていたら、選考委員会はもっと悩んだと思います」
14年、楽天の平均試合時間は3時間22分と発表された。パ・リーグ平均は3時間23分。楽天が突出してスピーディーな試合をやっているわけではないが、試合途中でリリーバーを投入する場面が少なくなれば、自ずと時間も短くなる。東京五輪の追加種目で野球・ソフトが懸命のピーアールを重ねているが、「試合時間が読めない」とし、TV中継への影響という課題も突きつけられた。タイブレーク制や7回制などの変則ルールの導入も検討されている。継投策全盛の時代に逆行するが、『則本型の投手』がもっと増えれば、別の選択肢も見えてくるのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)