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鳥谷残留で露呈したトラのコミュニケーション不足(前編)

 トラの主将・鳥谷敬内野手(33)の残留が正式発表された。1月9日、各メディアの取材に対応した坂井信也オーナー(66)のコメントによれば、同日午前中に報告があったという。鳥谷から直接、残留の一報を受けたのは高野栄一・球団本部長(51)だ。
 その高野本部長がマスコミ各社に話した限りでは、鳥谷から電話があったのは「8日」。補強全敗の状況からして、鳥谷の残留はチームの明暗を決めると言っても過言ではなかった。それほどの重要事項がすぐに『オーナー報告』された点を考えると、鳥谷が高野本部長に電話したのは『深夜』だったのではないだろうか。

 「代理人のスコット・ボラス氏が米国内で最終判断したからでしょう。日本との時差に加え、鳥谷自身にも考える時間が必要となり、深夜になってしまったと思われます。ボラス氏の『本命』は、正二塁手として正式オファーを出したブルージェイズではなかったようです。ブ軍のアンソポウロスGMも詳細は発表していませんが、単年契約、2年以降の残留選択権も球団が持つという内容だと聞いています。補強資金が豊富なメッツが獲得交渉から撤退した昨年末時点で、ボラス氏は鳥谷の売り込みに熱意を失ったのでは?」(米国人ライター)
 ボラス氏は「大型契約にしか興味を示さない代理人」と目されている。彼自身、「もっとも好条件を提示しているのは阪神」とコメントしていた。米挑戦の夢を持つ鳥谷に対し、自身のビジネスポリシーや、『日本人内野手に対する低評価』という現実も伝えていたのかもしれない。

 鳥谷の去就が決まらないころ、和田豊監督(52)と首脳陣は、中堅手・大和(27)の『ショートコンバート』を選択した。もともとは内野手だが、秋季キャンプでは守備練習にかなりの時間を割いていた。それも、ショートだけではなく、サードでの守備練習をこなしていた。紅白戦でスローイング・ミスが出るなど不安は残ったが、居残りノックを自ら申し出るなど、必至に努力していた。契約メーカーに「遊撃手用の新グラブを注文した」とも聞いている。また、自主トレ先でのこと。大和は信頼を寄せる一部記者にしか、自主トレ先を明かしていないが、「センター? ショート? 早く決めてもらわないと…」とこぼしていたそうだ。「鳥谷流出の際はショート」という“条件付きコンバート”によって、大和のオフ期間の調整にも大きな影響が出たことは間違いない。

 1月5日、西宮市内の球団事務所で年賀式が催された。壇上挨拶に立った南信男・球団社長(60)は「結束という意味で、コミュニケーションを大切にしてほしい」とスタッフを戒めた。
 コミュニケーション…。西岡剛(30)に対しては、もっと配慮すべきだったのではなきだろうか。西岡は外野コンバートが伝えられていたが、一貫して「(首脳陣から)そんな話は聞いていない」と言い続けている。和田監督が連絡を遅らせた理由は“鳥谷待ち”だったからだが、12月の契約更改時点で球団スタッフが「いずれ、和田監督から直接連絡があると思うが…」と前置きし、外野コンバートの構想を伝えておいても良かったのではないだろうか。自主トレ初日の1月7日、西岡は「二遊間でレギュラー争いをし、それで負けたら控えでもいい」とまで言い放っている。外野コンバートを正式に聞かされていない憤りもあったのだろう。
 フロントが契約更改の時点で外野コンバートの件を伝えなかったのは、和田監督に配慮してのことか、それとも、現場とのコミュニケーョン不足によるものなのか…。

 プロ野球選手は、良くも悪くもプライドが高い。仕事始めに出た『コミュニケーション』とは、今季、球団創設80周年を迎える指針というよりも、反省の意味合いの方が強かったようである。(スポーツライター・飯山満)

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