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福田首相にまた頭の痛い大問題。対北朝鮮制裁延長のウラ

 ガソリン値下げと舛添厚労相辞職要求で追い詰められた福田康夫首相にまた決断のときが迫っている。今度は北朝鮮だ。対北朝鮮制裁措置の期限切れを迎え、どう対応するかに注目が集まっている。

 同措置は、2006年10月に核実験を強行した北朝鮮に対し当時の安倍政権下で発動された。北朝鮮籍全船の入港禁止など半年間の期限付き措置でこの13日に期限切れとなる。就任当初は事態打開を期待された福田首相は延長に踏み切るか、それとも秘策があるのか。
 問題はそう簡単ではない。そもそもこの措置は「金正日政権への打撃」がうたい文句だったが、「金総書記が困っている」との話は聞かない。制裁措置が北朝鮮中枢にどれだけ影響しているか分からないのである。
 「約10年間、北朝鮮に中古自動車などを輸出してきました。最盛期には年間約2億円の利益を上げていましたが、昨年やめました。やりたくてもできない状態です」。九州地方のある貿易関係者はそう嘆いた。06年の核実験以降、日朝間の扉は厚く閉ざされている。
 北朝鮮事情に詳しい評論家の河信基氏は「ひとことでいえば効果はなかった。政府は金正日政権に打撃を与えるつもりだったが、制裁の前提となるデータがあいまいだった。北朝鮮側の変化が見えていなかった。中国や韓国、欧州との窓口が広がっていて、日本からの貿易が止まったとしても蛇口はいくらでもある」と指摘する。
 実際、北朝鮮と中国・韓国との貿易額は増加している。政府も「効果は期待薄」と感じ取ったのか、照準を別のところに定める。制裁発動と前後して、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関連施設への強制捜査が相次いだ。その中には別件捜査と断じられても仕方のないものが存在する。
 典型的なものは、排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車の使用本拠地を偽って登録したとして在日朝鮮人が逮捕され、昨年1月、滋賀県の朝鮮初級学校(小学校に相当)に大阪府警外事課が家宅捜索を行った例だ。警察当局が教育現場へ踏み込んだことに、関係者の間で「いくらなんでもやりすぎだ」との声が出始めた。強制捜査の際、揉み合う警察関係者と朝鮮総連関係者の映像が繰り返しテレビに映し出された。
 朝鮮総連中央本部広報室は、一連の捜査の影響について「朝鮮総連がまるで犯罪団体のように扱われることで、在日朝鮮人に対する差別感情や排他の雰囲気が蔓延する。そのことの被害が大きい」と話す。同本部には、商売を営む在日朝鮮人に銀行がさまざまな理由を付けて融資を断るといった「目に見えにくい被害」も報告されているという。
 在日朝鮮人社会ばかりではない。北朝鮮問題は日本の国内問題に直結すると指摘するのは前出の河氏。「『北朝鮮コスト』というものを考えなくてはならない。北朝鮮との軍事的な緊張が高まれば、軍事費が増大する。そのシワ寄せとして社会保障費などが削られる。北朝鮮問題は拉致問題だけでなく、国民生活を脅かしている」
 国政レベルで対話に向けた動き(別項参照)も生まれている中で、政府は3月中旬、拉致被害者家族との面会で制裁措置の再々延長の方針を示唆した。もちろん核実験を認めるわけにはいかないが、効果が限定的だったことは明らか。懸案の拉致問題を動かすためにも福田首相の現実的なリーダーシップが待たれる。

○別項・国政レベルでの対話の動き

 自民党では山崎拓議員が主導して昨年12月に「朝鮮半島問題小委員会」が、民主党では2月に「朝鮮半島問題研究会」がそれぞれ立ち上げられている。どちらも北朝鮮との対話重視の姿勢を打ち出し、超党派での訪朝を模索中だ。
 同研究会事務局長で、数回の訪朝経験がある川上義博参議院議員は「外交には緩慢の度合いが必要だ。両方ともピストルを突き合せていたら、最悪の場合は戦争になる。圧力は否定しないが、対話を重ねていかなければならない」と、これまでの政府の姿勢に疑問を呈す。
 山崎拓議員は小委員会の立ち上げについて、福田首相の意向が反映されていることを明言。「何としても福田政権で日朝国交正常化を」と意気込んでいる。

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