「渡辺監督は3年契約の最終年です。クライマックスシリーズに滑り込めば、フロントは(続投を)考えると思いますが、でも、球宴明けも最下位のままなら、途中休養なんてことにもなりかねません」
ネット裏の関係者はそんな懸念も口にしていた。
“激震”は、監督人事だけではない。投打の中核選手もフロントに噛み付くかもしれないのだ。
「涌井と中島がどうなるか…。もし本当に新監督を迎えるようなことになったら、中島を易々と手放すわけにはいかないでしょう」(前出・関係者)
中島は昨年オフ、ポスティングによる米挑戦を訴えたが、フロントが戦力として手放せないと判断。「ポスティングにかける約束」を言った、言わないの論争にもなったが、最終的には年俸2億8000万円プラス出来高(推定)で残留した。
「中島とポスティングに関する話し合いを行ったかどうかと聞かれれば、話し合いはしています。でも、フロントは『考える』という曖昧な言い方をしており、前向きとも取れるニュアンスはあったにせよ、『ポスティングにかける』とは断言していませんし、文書も交わしていません」(球界関係者)
しかし、今年1月の契約更改後の会見で、中島は「(2011年の)シーズンが終了したら、真剣に検討してくれるという話を球団からいただきました」と語っている。それに対し、前田康介球団本部長は「全てはシーズンが終わってから」と言うに止まり、やはり、「ポスティングにかける」とは明言していない。仮に「ポスティングは認めない」と言い直したとしても、「真剣に話し合う」としか言っていないのだから、フロントはウソを付いていない。
その中島は今年6月12日に国内FAを取得したが、米挑戦の夢があるので来季の海外FA権取得までライオンズを出て行くことはないだろう。
パ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう予想する。
「渡辺監督が残留するにせよ、あるいは、新監督を迎えるにせよ、今、チームは最下位に沈んでいます。来年のライオンズは『チーム再建』がテーマになるでしょうし、打率3割、90打点の計算が立つ3番バッターの中島を手放すはずがありません。チームが下位に沈んだことにより、中島のポスティングはなくなった、今オフ、また『言った、言わない』の論争になるのでは?」
また、ポスティングシステムについて、在京球団職員が「球団の捉え方」を説明してくれた。
「一般論として、ポスティングは『球団の権利』と解釈しています。米挑戦の意思が固い選手は引き止められません。海外FA権を行使された場合、補填金も人的補償も求められない…。それだったら、FA権を行使する前にポスティングにかけて、落札金を得た方がいいという考え方が定着しつつあります」
ポスティングシステムは「球団の権利」と捉えているようである。
昨年オフ、西武球団が中島のポスティングを認めなかったのは、米球界における中島の評価とその落札金を予想し、天秤にかけたのだろう。その結果、この程度の落札金しか得られないのなら、戦力として中島を残留させた方がいいと判断したようだ。
ライオンズがこのまま下位に沈めば、来季の指揮を取る監督は中島に残留を強要するだろう。そうなれば、中島はまた、「約束が違う!」と激昂するに違いない。
「涌井秀章は年俸調停に踏み切りました。球団とすれば、エースとはいえ、面白いはずがありません。涌井は今季も順調な成績を残し、大幅昇給を勝ち取るつもりでいますが、チームの成績不振を理由に減給を提示される可能性も出てきました」(前出・関係者)
そのとき、涌井秀章(25)も絶対に納得しないだろう。
この連敗中、渡辺監督は審判や相手チームのコーチに対する失言もあり、それをフロントに注意されたという。渡辺監督の去就がおかしなことになれば、中島、涌井のオフにも多大な影響をもたらすのは必至だ。