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サヨナラ負けの悪夢を払拭できない星野楽天のスターティング・オーダー

 プロ野球選手にとって、もっとも屈辱的と感じる起用法は、イニングの途中で守備の交代を告げられることだそうだ。

 7月5日、オリックス対楽天の一戦。試合はオリックス打線が最終回に1点ビハインドを覆し、サヨナラ勝利を収めた。この1点を巡る9回裏の『楽天の守備』に気掛かりな選手起用が見られた。この回先頭の後藤が粘り、10球目をレフト前に弾き返した後だった。左翼手の中村真人(29)が打球のバウンドの目測を誤り、後藤を二塁まで走らせてしまった。星野仙一監督(64)は横川史学(26)を送り、中村をベンチに引き上げさせた。『懲罰交代』である。この采配が間違っているとは思わない。
 しかし、翌6日のスターティング・オーダーに中村の名前はなかった。

 屈辱的なイニング途中での守備交代を経験した元プロ野球選手の言葉を思い出した。元西武ライオンズの柴田博之氏である。テレビ番組との関連もあったが、拙著『戦力外通告 諦めない男編』(角川マーケティング刊)の取材で貴重な経験談を聞かせてもらった。

 2001年6月25日の対千葉ロッテ戦、2点リードで迎えた9回裏、一死一、三塁の場面で飛球が中堅を守っていた柴田の頭上を舞った。なんなく捕球したものの、返球する相手を間違えてしまった。三塁走者のタッチアップは仕方ない状況であり、プロの外野手として求められていたプレーは、一塁走者を得点圏の二塁に進ませないことだった。送球モーションに入った瞬間、間違いに気づいたが、もう体を止められなかった。力のない緩いボールがカットマンに返って来ただけ。試合は辛うじて逃げ切ったが、柴田はゲームセットの瞬間をベンチで迎えた。東尾修監督(当時)が懲罰交代でベンチに下げたのである。
 ベンチに帰るなり、伊原春樹コーチに叱られた。それだけではない。東尾監督は後ろから近づき、叱られている柴田の後頭部を平手打ちした。ミスを犯した悔しさからその夜は一睡もできなかったそうだが、翌日のゲームで東尾監督は柴田をスタメンから外さなかった。ミスはミス、昨日は昨日…。こうしたメリハリのある選手起用が『ライオンズの強さ』を構築した。

 星野監督も中村に猛省を促すため、スタメンから外したと思われるが、他ナインの眼にはどう映ったのだろうか。スターティング・オーダーが発表されたとき、昨日のサヨナラ負けの続きを見せられているような思いがした。中村は完全なレギュラーではないが、ミスをした翌日だからこそ、スタメン出場させるべきではなかったのか−−。
 昨季、最下位に沈んだブラウン監督は聖沢、内村を我慢して起用し、結果、新しい戦力の息吹を感じさせてくれた。09年首位打者で2年連続3割をマークした鉄平(28)が2割3分台に低迷し(5日時点)、聖沢たちにも昨季ほどの勢いが感じられない。
 先発ローテーションは岩隈、ラズナー、永井の3人を欠き(同時点)、苦しい展開が続いている。星野監督の代弁者でもあった山崎武司も故障でベンチから外れている。中村のスタメン落ちも“星野流の鉄拳制裁”と思いたいが、楽天ベンチの士気が再び高まってくるまで、それ相応の時間を要するのではないだろうか。

 そういえば、東尾氏も次期監督候補として名前の挙がった1人である。他意はない。だが、震災復興のシンボルになるはずの楽天ナインが下を向く姿はもう見たくない。(一部敬称略/スポーツライター・美山和也)

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