「青山246深夜族の夜」というアルバムがあるクレイジーケンバンドのリードボーカル(作詞・作曲)横山剣氏は、単なる246号の国道をニイヨンロクと呼んでひとり昂(たか)ぶっているカーマニアへ、車に囚われてはいけないと、1600GT好きな自分への戒めを兼ねながら、愛あるクラクションを鳴らしている。
横山氏は鋭い批評家でもある。振り返れば、長々と64年も続いた昭和時代を「ショショショショショショショショ・ショーワ」と輪切りにした楽曲「昭和レジデンス」は、NHK・BSの昭和回顧バラエティ「日めくりタイムトラベル」で使われてもいるから、お耳にしているかもしれない。横山氏は「イイネッ」という、切れ味がいい究極的同意を示す、軽薄にして無責任な相槌(あいづち)でも一世を風靡。また演技者としても異彩を放つ。地元横須賀での噂のライブでは中年と初老が踊り狂い、それは朝まで続くのだそうだ。ウーム、行ってみたい…。
その246号線が三宿通りと曖昧(あいまい)に交差する十字路に、「喜楽亭」はある。東急線の池尻大橋駅と三軒茶屋駅の中間に位置して最寄駅もないことが、かえってお忍び客を掘り起こした感のある三宿の交差点周辺は、流しているとしばしば芸能人に遭遇するといわれてもいる。街も穏やかに発展を続け最近、小田急系のスーパーマーケットOXがオープンしたと思っていたら、その真向かいに存続が難しいとされる自然食品の店もできた。きっと買い物客の単価が高いのだろう。
ケーキ屋のラ・テールは着々と勢力を伸ばし、パン部門、レストラン部門も新たに開いて進撃中。その一角のお洒落(しゃれ)な壷焼き欧風カレー屋さんは、“ブイヨンをつくることから始めて10時間以上煮込み一晩熟成させた”味が自慢。
おいしいから、それこそニイヨンロクをぶっ飛ばしてでも客が押し寄せる。牛タンさっぱりサラダや、ソーセージ盛り合わせをつまみながら、車でなければビールやワインをいただき、最後にフツフツと壷で音を立てているカレーで締めましょう。サフランライスが食欲をそそる900円のリーズナブルカレーから、シャトーブリアンのヒレステーキ200グラムを乗せた超豪華版まで各種お取りそろえ。お土産にはカレーパン262円がお奨(すす)め。これは辛口よりも、普通のほうが喜ばれる傾向にあります。
お忍びで誰が来たかですか? 小耳に挟んだのはSMAPの草なぎ氏です。
予算3000円
東京都世田谷区池尻3-30-5