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軍艦島上陸ツアー解禁

 廃墟マニアに絶大な人気を集める通称・軍艦島こと端島(長崎県長崎市)が、同市条例に基づき4月末から島への上陸が許可されることを受け、近畿日本ツーリスト(東京都千代田区)が軍艦島上陸ツアーの販売に踏み切った。廃墟の錆びれた感じにゾクゾクする愛好家にとっては、待ってました! というプラン。早くも同社には問い合わせが殺到中という。35年ぶりの“上陸”は軍艦島ブームを巻き起こすか?

 軍艦島は、その軍艦のような外見から廃墟マニアの間で聖地と称される“幻の海上都市”。南北に480メートル、東西に160メートルという小さな島だ。1890年から三菱財閥が石炭採掘を開始。最盛期には5200人が生活し、当時としては世界一の人口密度を誇った。島は学校、病院、映画館、パチンコ店までそろえた立派な都市だった。しかし、主要エネルギーが石油に移行したため1974年1月に閉山。以後35年間無人島として姿を残し、上陸はずっと禁止されていた。

 同社は「若い世代に広がる廃墟マニアの方々をメーンに、4月から10月中に月2回程度のツアーを販売したい。早くも多くのお問い合わせをいただいている」と、国内旅行の起爆剤にと期待を込める。
 軍艦島はこれまでノスタルジーな世界観に魅かれた一部の廃墟マニアが単独上陸をしかけ、その写真をネットに公開するなどしてきた。地元の漁師と直接、値段交渉して岸まで送り迎えしてもらったようだが、これらは完全な無法者。今回晴れて“公式上陸”できることになり、文化庁の世界遺産暫定リストにも入った島を一目見たいと言う観光客にとっては待ちに待った解禁といえそうだ。
 廃墟マニアは建築物の錆びれ具合はもちろん、深い歴史を感じさせる佇まいにも惹きつけられるという。その意味で軍艦島は島全体が廃墟であり、存在そのものが島民の歴史。廃墟マニアが聖地と崇めるのにはこうした前例を見ないスケールの巨大さがある。この度、長崎市が条例改正してまで“解禁”を決めたのは、観光客誘致の目玉にしたいとの計算も働いたのだろう。
 第1回ツアーは4月24日から26日。JR長崎駅から参加の場合は大人1人2万6800円〜、羽田発着の場合は同5万3800円〜の予定。実質、島への上陸時間は2時間半ほどになるという。
 しかし、同ツアーは必ずしも上陸できるわけではないので注意が必要だ。市の条例により風速が秒速5メートル以下、波高が0.5メートル以下などの気象条件が満たされない場合は、クルージングや資料館巡りに切り替わる。島周辺は台風が多いことで知られ、同社は上陸できるのは年間100日ぐらいではないかと見積もっている。その稀有な体験がさらに廃墟マニアの心をくすぐりそうだ。(関 淳一)

○軍艦島を世界遺産にする会理事長「安全面には注意を」
 ツアーにはNPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」が同行し、解説を務める。理事長の坂本道徳氏も閉山される19歳まで軍艦島で育った。炭鉱は24時間操業。島は灯が消えることのない不夜城だったと振り返る。
 「この島は黒字で閉山したんです。退職金も満額出ている。当時、庶民の憧れといわれた“三種の神器(クーラー・カラーテレビ・自家用車)”もほとんどの島民が持っていて、しかも閉山時には置いていったくらいです」
 島を世界遺産にしようと思い立ったのは10年前。「同窓会で久しぶりに地元の仲間と会い、軍艦島に行きました。もちろん当時から上陸禁止でしたが(笑)。すると25年前、確かにそこに自分がいたという形跡が当時のまま見つかるんですよ」
 世界遺産一歩手前とはいえ、島はあくまでも廃墟。安全面には十分注意してほしいという。
 「上陸すれば檻の中に放たれたようなものです。いつどこが崩壊してもおかしくない。だからこそ私たちの解説と指示に従って見学してもらいたいですね」
(写真提供=軍艦島を世界遺産にする会)

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