稲葉監督が各メディアのインタビューに応じ、東京五輪への抱負や課題を挙げていた。「国際試合は左ピッチャーがポイント」といくつかのメディアで話していたが、NPBスタッフの前では「打撃面での懸念」もこぼしていたそうだ。
「4番を任せてきた筒香嘉智がメジャーリーグに移籍してしまいました。アメリカがメジャーリーガーの五輪派遣を渋っていることは説明するまでもありません。そうなると、4番は広島の鈴木誠也に託し、その前後を巨人・岡本、西武・山川、ソフトバンク・柳田らで固めることになるでしょう。鈴木が対戦投手から徹底的にマークされた時が課題ですね」(球界関係者)
稲葉監督が秘かに期待している選手がいるという。第4回WBC大会で筒香と4番を争った中田翔である。
「中田には一発があり、国際試合の経験も抱負です(前出・同)
中田は昨季、本塁打24、打点80と成績はイマイチだった。19−20年オフ、バットの形を変更するため、メーカーに足繁く通い、グリップエンドの形態や重さについて、細かな指示を出していたという。
このヤル気はもちろんだが、中田の名前が稲葉監督の中で再クローズアップされた理由はほかにもある。意外と器用な一面もあるからだ。
「五輪の野球競技ではベンチ入りメンバーは24人に削減されます。投手、捕手、内外野ともに人数構成を考え直さなければなりませんが、中田はけっこう便利屋なところもあるんですよね」(前出・同)
中田は主に一塁か、指名打者として日本ハムを牽引してきた。しかし、三塁と左翼の守備に着いた経験もある。「守備が巧い」という話はないが、左翼守備に関しては、
「強肩ですよ。(打球を)捕るまではぎこちないところもありますが、返球のコントロールも良いし、ナメて次の塁を狙った走者が何度か刺されています。肩は衰えていないはず」
と、パ・リーグ他球団のコーチも一目を置いていた。昨秋のプレミア12大会で招集された外野手は近藤健介、丸佳浩、周東佑京、吉田正尚、鈴木。近藤、丸、吉田が大会序盤で打撃不振に陥り、稲葉監督がスタメンを決めかねる場面もあった。内野と外野が兼任できる中田が代表復帰すれば、貴重なユーティリティ・プレーヤーともなる。
「中田は外国人投手特有の『動くボール』にも対応できるんです」(ベテラン記者)
パ・リーグに詳しいプロ野球解説者によれば、「中田の名前が出たら、日本ハムは清宮を代表に推してくる」と予想していたが…。中田にも「まだ清宮には負けられない」の思いもあるだろう。
「中田はチーム内の若手選手が好成績を挙げると、貴金属やブランド品をプレゼントしています。これは彼がまだ若手だったころ、当時、現役だった稲葉監督がしてくれたことです」(前出・同)
中田が稲葉監督の胸中を選手たちに代弁する場面も見られそうだ。2020年、中田のバットに注目しておいたほうが良い。(スポーツライター・飯山満)