『RIZIN.14』
▽12月31日 さいたまスーパーアリーナ 観衆 29,105人
バーバラ・ネポムセーノをパンチで圧倒しV1アームロックで快勝したギャビ・ガルシアに、“ミスター女子プロレス”神取忍が噛みついた。神取とギャビは過去2回対戦が組まれていたが、1度目は神取が怪我で欠場し、女子プロレスラーの堀田祐美子が代打で対戦。2度目は昨年末、ギャビが計量に失敗したため、対戦が流れていた。2人は昨年末、リング上で対戦を約束。再戦の場が注目されていたが、ギャビのRIZIN復帰戦となった今大会ではマッチメイクされなかった。
リングサイドで井上貴子、遠藤美月のLLPW-X勢とともに試合を見届けた神取は、試合数、マイクを握ると「逃げんな、やれよ。みんな見たいだろ。やれよ。今やってやるよ、逃げてんじゃねぇよ」と貴子、遠藤やRIZINレフェリーに制止されながらもリング内のギャビに掴みかかろうとする。
ギャビは「私は神取選手を心から尊敬しています。私は戦う用意はあります」と答えたが、それでも神取は「いつでもやってやる」となかなか引き下がらない。これを見たギャビはかまわず「もう誰からも逃げません。誰でも向かってきてください。ギャビ・ガルシアは戻ってきました。誰でもいつでも戦います。女子のヘビー級のベルトをお願いします」と一方的に話を切り上げた。
試合後の会見で、ギャビは神取戦について「まず最初に、神取忍選手のことはアスリートとしてリスペクトしています」と前置きし、「去年、確かに対戦は流れてしまって、神取忍選手もフラストレーションを抱えていることは容易に想像がつきます。私は対戦相手を選びません。誰とでも、やれと言われたら私はやります」と述べた。
その上で「でも神取選手に限って言えば、彼女と対戦する予定のときに負傷し、代理(堀田)を送ってよこし、私はその相手をKOで下しました。そしてまた今回、神取さんがやりたいと言っているわけですね。私は全然問題ないんですけど、私とやるならそれ相応の覚悟が必要だと思っています」と指摘。
「やれと言われたら誰とでもやります。でも私が思うのは、『やりたいやりたい』という人はいくらでもいる。でも、最後のホントの本番間近になるとシッポを巻いて逃げる人がけっこういると思っています。チャレンジすることは簡単かもしれないけど、リングに上って対戦するというのはまた違う話。私はいつでもどこでも誰とでもやります。神取選手についても全く同じです」と答えた。彼女の話を総合すると、神取戦に“積極的”なスタンスではないようだ。
榊原信行実行委員長は総括会見で「ギャビは強すぎて、考えなきゃダメですね」と対戦相手や階級も含めて、今後の起用法については熟慮するとした。神取については「僕は格闘技に求められる要素は『笑い』だと思っているんです。笑いがないと格闘技はつまらない」と持論を展開。「神取忍はスゴイ。54歳ですよ。きょう彼女が来たのはただの話題作りじゃなくて、本当にギャビとやりたいんです。僕にも肩の怪我は問題なく『いつでもギャビとやれる』と真剣に言ってきた。ただこの試合こそ安全面が心配」とギャビとの対戦については慎重を期す考えを明らかにした。
それでも榊原実行委員長は「ただ、とてもいいアクセントになった。日本のプロレスラーは捨てたもんじゃないなと思いましたね。最高でした」と神取の行動を称賛している。RIZINは今年、神取とゆかりの深い横浜アリーナで2回大会を予定しているだけに、今後の展開も見逃せない。神取にとって悲願のギャビ戦は実現するのか?注目していきたい。
取材・文 / どら増田
写真 / 山内猛