同球団の外野陣は若手3選手ががっちりレギュラーとして固定されているため、イチローはあくまでも“控え”が前提での入団。
ところが、同球団は控え選手の入団会見を、イチローの母国・日本で行うという力の入れようだった。球団幹部も、米国からごっそり来日するなど、まさに“VIP待遇”。
確かにイチローはMLBにおいても、レジェンドの一人だ。とはいえ、あくまでも今回は控え選手でのオファー。それでいて、異例といえる日本での入団会見を行った裏には、同球団の思惑が見え隠れする。
同球団は昨季、ナ・リーグ東地区で4位。12、13年は同地区で最下位の弱小球団。観客動員においては、昨季リーグワーストの不人気球団だ。これまで、日本人選手が1人も在籍したことがないため、日本国内で人気、注目度は最低ランクだった。
しかし、日本国内で今でも人気ナンバー1のメジャーリーガーであるイチローを獲得したからには、ジャパンマネーを当て込んでいるのはいうまでもない。放映権料、スポンサー収入、日本からの観戦ツアー、グッズ売り上げ…。イチローが入ったことで、大きな増収を見込んでいるのだ。
ただ、そのためには、イチローが試合に出なければ、話にならない。代打や首位固め専門では、日本のファンや企業にもアピールできない。そこで、秘かに進む仰天のプランがイチローの一塁挑戦だ。
今季、同球団の正一塁手候補はジャイアンツからFA移籍したマイケル・モース内野手(32)だ。モースはマリナーズにも在籍していたため、イチローとは旧知の間柄。
ナショナルズ時代の11年には、キャリアハイとなる打率.303、31本塁打、95打点をマークしたことがあるが、13年は不振。昨季も打率.279、16本塁打、61打点と平凡な成績に終わっており、そのバックアップ要員として、イチローが浮上しているのだ。
モースの調子が悪い時や故障した時に、イチローを一塁で起用できれば、チームにとっても、出場機会がほしいイチローにとっても一石二鳥。もともと、モースは外野手であるため、イチローの調子がいい時は、立場を逆転させて、イチローを一塁手、モースを外野のバックアップにする起用法も考えられる。
そこで問題になるのがイチローの意思だ。高校時代、投手や三塁手の経験があるイチローだが、プロ入り後は外野手に専念している。イチローが外野へのこだわりを捨て、一塁へのチャレンジを受け入れれば、出場機会は大幅に増え、あと156本に迫ったメジャー通算3000安打達成の日も近くなる。
イチローの運動能力の高さを考えれば、一塁をこなすのはさほどむずかいいことではないだろう。あとはチームから一塁挑戦の打診があった場合、それを承諾するかどうかだ。
(落合一郎)