この火災でほかに男性9人、女性1人がけがをし、うち4人が重症を負った。けが人は32歳から77歳。死亡した15人の死因は一酸化炭素中毒や気道熱傷とみられる。大阪府警浪速署が身元の確認を急ぐとともに、出火原因を調べている。
火災があったのは、大阪市浪速区難波中3丁目の鉄筋7階建て雑居ビル「檜(ひのき)ビル」。1日午前3時ごろ、同ビルから煙が出ていると119番通報があった。大阪市消防局によると、約37平方メートルと天井や壁を焼いて約1時間半後に消えたが、1階の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」の客15人の尊い命が奪われた。
調べでは、同店は個室が32室並ぶ大型店で、島本和典店長は「個室の1つから出火したのではないか。客は寝ていたと思う」と話している。出火当時、26室が使用中で、店長と店員2人、26人前後の客がいたとみられる。大小ある個室は広さが2〜3平方メートルで、木製の仕切り板で隣室と仕切られ、大人一人が横になれるリクライニング式ソファやテレビ、ビデオデッキなどが置いてある。
昔の個室ビデオはアダルトビデオ(AV)鑑賞のためのスポットだったが、現在は“女の子付き”などの一部店舗をのぞけば、漫画喫茶のように仮眠目的の利用客が多い。キャッツは「AV見放題!!」などとうたっており、ナイトコース(23時〜翌10時)が1500円とリーズナブルな価格設定だった。
2001年9月には、新宿・歌舞伎町の地上4階地下2階建ての雑居ビル「明星56ビル」から出火し、4階のセクシーパブ「スーパールーズ」などで犠牲者が出た。同年10月にも近くの6階建て雑居ビル「歌舞伎町三洋ビル」5階の風俗マッサージ店「ひまわり」で死者2人を出す火災が発生し、02年消防法改正のきっかけとなった。しかし、繁華街の雑居ビルをふたたび悪夢が襲った。
現場は南海電鉄難波駅から南西約150メートルの繁華街の一角。難波は大阪を代表する繁華街で、飲食店の入る雑居ビル、風俗店が立ち並ぶなど“西の歌舞伎町”といえる賑わいをみせる。