中島争奪戦に名乗りを上げたのは、阪神、埼玉西武、福岡ソフトバンク、オリックス、中日。古巣でもある西武は11月6日、鈴木葉留彦・球団本部長が電話連絡を取り、具体的な年俸額も伝えた。関係者によれば、「4年10億円」とのこと。しかし、中島はこの古巣からのオファーに対し、返事を保留。鈴木本部長は「年内に回答してほしい」とも伝え、電話を切ったそうだ。
『中島争奪戦』と言えば、阪神が国内他球団を一歩リードしていたはず。9月には「中島に近い関係者との接触にも成功し、日本帰還にマンザラでもないこと」も確認できたという。プロ野球解説者が、阪神の今回の『再提示情報』をこう分析する。
「シーズン中の9月と、今では状況が分かってきたんですよ。米FA市場は内野手の人材が少なく、代理人も敏腕のスコット・ボラス氏に変更したことで、中島自身、『アメリカに残り、メジャー昇格に向けて再チャレンジできるかも』と思ったんでしょう。阪神は鳥谷の米挑戦が確実となり、金子(千尋=オリックス)、成瀬(善久=千葉ロッテ)といった国内FA選手にヒジテツを食らっています。クリーンアップを任せられる内野手が欲しい、そして来季、80周年を迎えるチームの話題作りのためにも中島が必要なんです」
だが、古巣西武の反応がビミョ〜に変わってきた。鈴木本部長は『阪神の再提示情報』と前後して、こんな言い方をするようになった。「マネー戦争には参加しない」「(中島側の連絡を)待つしかない」。
積極的なトラと、受け身の獅子…。西武サイドが中島に伝えた条件とは金銭面だけではなかったようだ。
「西武サイドは中島に『三塁手で使う』とも伝えたようです。中島は遊撃手としてのプライドも高い」(球界関係者)
秋季キャンプ、フェニックスリーグでの西武を見て感じ取れる『2015年構想』だが、田辺徳雄監督(48)は、3年目の永江恭平(21)を『遊撃手』として定着させたいのではないだろうか。ドラフトで外崎修汰内野手(富士大=3位)と山田遥楓(佐賀工=5位)の2人の内野手を獲得した。2人とも守備には定評がある。年齢的に見て、外崎は即戦力として獲得したはずだが、富士大学では主に二塁を守っており、まずは主砲候補・浅村栄斗(24)とレギュラーを争うことになるだろう。山田は遊撃が本職だが、「高卒でいきなり」は考えにくい。現有戦力では、鬼崎裕司、渡辺直人もいるが、彼らは30代だ。
「永江は渡辺久信シニアディレクターが監督時代から一目置いてきました。『松井稼頭央2世』と首脳陣は見ており、渡辺SDの後を継いだ伊原春樹氏が遊撃手だった浅村を二塁に固定しようとしたのも、永江の成長に期待していたからなんです」(前出・同)
松井稼2世・永江は守備範囲も広い。浅村の遊撃守備も躍動感があって見ていて楽しかったが、2人を競わせてどちらかを潰すよりも、その両方を使う守備シフトを選択したのだろう。その永江の課題は打撃。必死にバットを振らされていた。
「13年ドラフト4位の金子(一輝=19)もいい。守備範囲が広く、一塁への送球も早い」
西武二軍と対戦するイースタンリーグ首脳陣から、そんな話を聞いたこともある。永江、金子、新人・山田…。西武には堅守俊足の遊撃手候補が控えているのだ。
「19日、西武は日本ハムからFA宣言した小谷野栄一と初交渉を行い、好感触を得ています。小谷野の本職は三塁。しかも、人的補填の発生しない『Cランク』のFA選手です。西武の本命は中島ではなく、この小谷野では?」(前出・プロ野球解説者)
小谷野の14年・推定年俸は7000万円。FA獲得となれば『昇給提示』は当然だが、『4年10億円』の中島よりも“割安”だ。日本ハムは3年目の捕手・近藤健介を三塁にコンバートしているだけに、小谷野の気持ちは『獅子』に傾いているのではないだろうか。
中島は米ウインターミーティングの行方を見てから日本帰還を正式に判断すると思われる。しかし、タイミングを見誤れば、「トラがキューバの遊撃手を物色」なんてことにもなりかねない。