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「俺の手のひらの上で転がした」内藤哲也“消化試合”をベストバウト級の試合で制す!

 「レスリングどんたく2016」5・3福岡国際センターには、5,299人という超満員の観客が詰めかけた。

【試合前は五分五分も試合後にはL・I・Jを支持】

 内藤哲也が石井智宏を相手に初防衛戦を行ったメインのIWGPヘビー級選手権試合は、30分を超える大熱戦。内藤がオカダ・カズチカを破りIWGPヘビー級王座を初戴冠した4・10両国国技館大会では内藤への支持が圧倒的だったが、この日は両国で「帰れ」コールまで受けた石井への声援も数多く飛んでおり、度重なる介入を繰り返したロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(以下L・I・J)に対しては大きなブーイングが浴びせられた。これはL・I・J旋風がまだ地方にまで行き届いていないことを意味している。

しかし、戦前は「消化試合」と言い切っていた内藤と「凄惨な消化試合」と言い返した石井の意地がぶつかり合い、石井が滅多に使わないドラゴンスクリューや膝十字固めなどを繰り出して、内藤にとっては泣きどころである膝を効果的に攻め立てたことで、タイトルマッチに相応しい年間ベストバウト級の試合となった。観客はこれを制した内藤に惜しみない拍手を送り、最後はL・I・Jの大合唱。この光景は、以前オカダが棚橋弘至を破り、レインメーカーショックを与えたときと非常に似ている。

【内藤辛勝も「すべては俺の手のひらの上だよ」】

 「『石井、あと一歩だったんじゃないか』とか『内藤、凄く追い込まれたんじゃないか』とか、みなさん思ってるかもしれないけど、残念ながらそれもすべて、俺の手のひらの上ですよ。だから、俺言ってんじゃん! たとえ、防衛戦の相手がキャプテン・ニュージャパンで、会場が東京ドームだとしても、俺はドームを大爆発させますよ。もうね、挑戦者が誰とか関係ないから。俺がリングで、俺の世界を見せれば、たとえキャプテン・ニュージャパンだとしても、俺は東京ドームを爆発させますから。だから、石井が頑張ったんじゃないよ。あれは石井が頑張っているように見えただけ。あれはすべて、俺の手のひらの上です」

 6日に行われたシリーズ明け会見で、内藤は一気にこうまくし立てた。L・I・Jを結成してからの内藤は勝っても負けても“余裕”を崩さない。オカダも終始“余裕”がある選手だが、クセがある分、内藤のほうが不気味さを兼ね備えているように見える。5・3福岡大会をテレビ解説した山崎一夫氏は「もともと持っていた華の部分に、毒が加わった」と内藤を評した。あれだけ凄い試合を見せられて「俺の手のひらの上だよ」と言われてはファンの頭の中は混乱するのではないだろうか。もちろん対戦相手にとってはこれ以上の屈辱はない。

 ただ、最近のプロレスは“分かりやすさ”を追求するがあまり、ファンに“考える”力が欠けているのは確か。それはプロレスというジャンルが広がっていくためには決して悪いことではないのだが、プロレスに対して“考える”ことはプロレスを楽しむ上で醍醐味のひとつである。内藤が発するストレートな発言と、今回の謎かけのような発言から内藤旋風を紐解いてみるのも面白いだろう。

【次なる挑戦者はオカダに決定も「俺がやりたいのは…」】

 「今日の会見、俺が次の挑戦者を指名するための会見じゃなかったんですか? なんで、俺が話し始める前に、もうすでに大阪城のカードを発表しちゃってるわけ? エェ〜…。ホント、俺の、そしてIWGPヘビー級チャンピオンの決定権のなさを、改めて痛感しましたよ。今日、俺は指名できると思ってたからね。次の挑戦者として指名したかった相手は…EVIL! EVILの福岡での後藤戦、見た? 滝に打たれ、コスチュームを変え、そしてCHAOSの一員になった後藤を、福岡で圧倒しましたからね。今、IWGPの挑戦者として、一番ふさわしいのはオカダなんかじゃないよ。EVILだと俺は思いますけどね! なんなら、ファン投票でもやってみますか? 誰に挑戦してほしいか、オカダなのか、EVILなのか、ファン投票をやってみたほうがいいんじゃないですか?」

 4・10両国大会の一夜明け会見から、内藤が会社の決定に反した挑戦者を指名すること(前回はキャプテン・ニュージャパンとの30連戦)が恒例化しつつあるが、今回は福岡で挑戦表明をして挑戦が認められたオカダ(6・19大阪城ホール戦が決定)ではなく、同門のEVILが次期挑戦者に相応しいとコメント。SNSなどで会見をライブ配信で見ていたファンの反応は、7割近くがEVIL戦を支持しており、対戦相手が誰であろうとも「今の内藤なら誰とやっても面白くなるから、内藤がやりたい選手とやるべき」という声が大半を占めていると言ってもいい。そして、すぐにリターンマッチが認められたオカダに対して皮肉を込めるかのように「俺が大阪城で負けてもすぐに再戦できるなら軽い気持ちで挑めちゃう」と語り、2014年の1・4東京ドーム大会で自身が屈辱を味わった「ファン投票の開催」を提案した。

【ブーイングを浴びせ続けた大阪のファンへの想い】

 「非常に楽しみですよ、大阪のお客様の反応が。まぁ、やっぱり心のどこかで大阪のお客様だけには手のひら返しをしてほしくないな、と。あの、かつての大阪のままでいてほしいなって思ってますよ。なので、かつて僕が浴びたブーイングという名の大歓声を、僕は大阪城のメインイベントで期待してますよ」

 内藤に対して全国で最もブーイングを浴びせていたのは大阪のファン。かつてブーイングや罵声を浴びせていた大半のファンは現在、手のひらを返したかのように内藤を支持している。内藤は、そんなファンに対して複雑な感情を持っているのではないだろうか。その気持ちが会見でのコメントに繋がったように思える。大阪の過剰なまでの大ブーイングがなければ今の内藤はもちろん、L・I・Jも結成されることはなかったはず。ある意味、L・I・Jにとって大阪は生誕の地なのかもしれない。

 6・19大阪城大会には舌戦を繰り広げている木谷高明オーナーも来場するだろう。内藤はオカダだけではなく、ファンや権力とも闘うことになる。

(増田晋侍)
<新日Times VOL.18>

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