前回のラストでは主要登場人物が、いかにも真犯人という形で演出され、それが最終回の序盤でも継続される。彼はドラマ序盤から首絞めなど攻撃的かつ異常な言動が描かれ、快楽殺人鬼として納得がいく存在である。正義を口にしながら、主人公の目指す死因究明の障害になっており、彼が真犯人ならばドラマ的にもまとまりがいい。
しかし、原作との関係では『アリアドネの弾丸』後に出版された海堂尊のクロスオーバー作品『ナニワ・モンスター』でも活躍しており、犯人にしてしまうと原作と乖離する。何よりも、いかにも犯人と演出された人物が犯人だったらドラマ的に面白くない。視聴者をミスリードし、裏切ってこそのミステリーである。その期待には見事に応えた。
一方で、後半になって登場したぽっと出の人物が真犯人という展開は物語的には肩透かしである。これには一応の説明付けが可能である。『アリアドネの弾丸』は『相棒』など刑事ドラマのようなオムニバスと異なり、一つの連続したストーリーになっている。しかし、実は三種の殺人事件によって区切られている。ドラマの話数も第2話、第3話ではなく、stage 1-2、stage 1-3となっている。新たな殺人事件が起こるとstage 2-1という形でカウントされる。それ故に複数の話を一まとめにしたオムニバスと理解し、stage 3だけで見れば違和感は減少する。
それでも真犯人と主人公らとの接点が乏しく、ミステリー的には掟破りである。真犯人は、いかにも怪しげな表情・言動であり、真犯人であることに驚きはない。しかし、真犯人の情報の多くは白鳥圭輔(仲村トオル)の説明台詞で提供され、推理の手がかりは乏しい。怪しいから犯人とするならば、冤罪を生む警察の予断捜査と変わらなくなってしまう。
物語的には取って付けたような真犯人になってしまったが、その代わりに主要登場人物は大団円を迎えた。死因不明社会や冤罪事件などの社会性とエンターテイメントを調査させた快作になった。
(林田力)