1986年に登場した『アウトラン』は、その美しい映像と軽快なBGMで人気を博した、レースゲームの傑作である。いや、レースゲームというのには御幣があるかもしれない。たしかにレース的な要素は散見されるのだが、プレイ感覚はどちらかといえばドライブに近く、次々に移り変わっていく美しい風景を眺めているだけでも幸せな気分に浸れたものだ。
しかし、3年後に登場した続編『ターボアウトラン』は、大幅な使用変更によりドライブ的要素が極端に薄まってしまう。ターボボタンが追加されたり、パトカーがけたたましいサイレンを鳴らしながら追走してくるなど全体的にせわしない。ハードロック調へと変更されたBGMも(曲自体は悪くないのだが)、それに拍車をかけている。
結果、初代のように「海辺をのんびりドライブでも…」という気持ちにはとてもなれず、むしろ度重なる他車の妨害に「そこの車、邪魔なんだよ! オラ!」とDQNも顔負けの大荒れ運転だ。加えて、路上に障害物がやたらと設置されているのもいただけない。
また、設定されたライバル車よりもチェックポイント通過が遅い場合、助手席の彼女がライバル車に移ってしまうというビッチな演出も用意されており、イライラは募る一方である。
それでもアウトランシリーズは1993年に『アウトランナーズ』が、2003年には実に10年ぶりの新作となる『アウトラン2』が発売され、息の長い活躍を続けた。さすがにもう続編の話は聞こえてこないし、アーケードゲーム自体が衰退の一途をたどっているため、よほどのことがない限り新作の登場は望めないだろう。が、純粋にドライブを楽しみたいという欲求は、家庭用ゲーム機で満たされることとなる。
<家にいながらオアフ島をドライブ>
2007年に日本語版(XBOX360)が発売された『テストドライブ アンリミテッド』(TDU)。ハワイのオアフ島が舞台のこのゲームは、ドライブゲームの集大成とも呼ぶべき代物だ。細かい通りまで再現されたオアフ島を気の向くままにドライブできる夢のようなゲームで、インターネットを通じて友人とツーリングまでできてしまう。アウトラン好きなら是非プレイしてみてほしい。ちなみに来年には続編の発売も予定(今年9月の発売予定が延期に)されている。
なお、TDUではハードディスクにインストールしたBGMを流しながらドライブできるのだが、真っ先に入れたのは他ならぬアウトラン。夕暮れ時のオアフ島で『LAST WAVE』を聴いていたら、なんだか泣けてきた。(内田@ゲイム脳)
DATA
発売日…1986年
メーカー…セガ
ハード…アーケード
ジャンル…レース