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初舞台も大物っぽい、穂のかと、“ベイビーフェイス封印”の森山未來がただいま熱演中『カフカの「変身」』

 41才で死去した、プラハのユダヤ人作家フランツ・カフカ。20世紀を代表する作家の一人に数えられながら、最近ではなぜかサブカルチャー信仰者の“心の神”として生き続け、ひきこもりアーティストの元祖みたいに思われている。(実際は無職でなかったが)そんなカフカの代表作「変身」のグレゴール・ザムザを、これまたウエットなベイビーフェイス、森山未來クンが“ありえない体型”で熱演中だ。

 現在、ル テアトル銀座 by PARCOで上演されている森山未來主演『カフカの「変身」』(〜3月22日)。ほぼ満席の会場は森山未來目当ての女性客と、カフカ世代? のオジサマの姿が7:3ぐらいの割合で開演を待っている。全体的に落ち着いた雰囲気。

 シンプルな鉄骨の舞台セットで、柔軟な筋肉を最大限に生かして虫になったグレゴール・ザムザを表現する森山。これは18年前に同じスティーブン・バーコフの演出で宮本亜門が演じた役で、カフカがこれを書いた29才時の投影と言われている。そしてグレダ役には昨年、彗星のごとく映画界に飛び込んで来た穂のか。彼女は初舞台なのに堂々とした演技、ハスキーな声とサッパリ感が気持ちいい。グレゴールの父の永島敏行と母の久世星佳は常に安定的。意地悪な主任役で舞台俳優の福井貴一が前半を、後半は下宿人役の「劇団鹿殺し」丸尾丸一郎が、奇妙な笑いで場をさらう。ピーヒャララー、スポン!と、登場人物の動きに合わせて鳴るキーボードとパーカッションの生演奏が見事だった。

 「ある朝、不安な夢から目覚めると、グレゴール・ザムザは自分がベッドのなかで大きな虫に変わっているのに気がついた」この名文から始まるシュールな名作、『カフカの「変身」』。1883年生まれのカフカは、鬱々した自分の内面を表現した作風で、生前は売れず、世に名前が知られ始めたのは戦後。そして、「孤立化が進む現代」になって更にカフカはブームとなっている。シュールな漫画「さよなら絶望先生」(久米田康治:作)に出てくる不適なポジティブ少女、可符香ちゃんの名前も、多分カフカから来ている。

 それにしても、あいかわらずベイビーフェイスな森山未來なのだが、役柄上、彼の“カワイイ姿”がほとんど見られない。「セカチュー」とか「フィッシュストーリー」など映画ではとにかくカワイイのに、(宮藤官九郎作のロックオペラとかもそうだっけど)、舞台では常にハイレベルなテクニックを目指し、カワイイ役をやってくれない森山クン。まったくもってファン泣かせな役者である。(コアラみどり)

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