そこで指揮官は、今季オランダ2部MVPの本田圭佑と若手FW一番の成長株である岡崎慎司を先発させたが、この起用がズバリ当たった。
本田が所属するVVVフェンロは欧州ビッグクラブ移籍を狙う若い選手の寄せ集めチーム。同僚の間で点取り競争が行われているほどのエゴイスト集団だ。本田も「お前が点を取っているのはユーチューブの中だけ」と揶揄(やゆ)され、闘争心をかき立てられたという。そんな環境にいたのが幸いし、今季は36試合出場16得点を記録。動けて守れて点の取れる選手に変ぼうした。
その自信がチリ戦にも如実に出た。前半20分の岡崎の先制点は、本田の強引なミドルシュートから生まれたもの。本田はスキあらば遠目からでも打ちにいこうとした。こういうどん欲さを持った日本人選手が皆無に近かっただけに、斬新に写った。ダメ押しの4点目も少し距離のある難しいシュート。それを正確に決められるようになったのも成長を実証している。
岡崎にしても、持ち味である相手守備陣の背後に飛び出す動きを再三見せて2得点。「自分は必死にやって結果を出さないと次がない。チャレンジしないとしょうがない」と本人も話す。
2人は昨夏の北京五輪に出場し、3戦全敗の屈辱を味わった。「いくらパスをつないでも、最後は個の力。最後のところで仕事ができる選手が必要だと痛感した」と本田も言う。この悔しさをバネに、彼らは岡田ジャパンの戦力として認められつつある。
中村俊輔らベテランに頼っているだけでは日本代表は強くならない。今回の主力不在がケガの功名となり、硬直化しがちだったチームが活性化されれば面白い。