「インバウンド」は最近、よく耳にするワードだが、これは平たく言うと、ここ数年増え続けている訪日外国人のことを指す。政府は2012年以来、円安などさまざまな要因で日本を訪れる外国人数が増え続けており、14年には1341万3467人に達したと発表した。今年もさらに増え、2000万人に迫る勢いで、東京五輪が開催される20年には、3000万人もの外国人の訪日が見込まれているという。そこで、外国人を相手にするビジネスにも、ビッグデータの分析と活用の需要が生まれることになるという。
今回、アクセンチュアとWi2が共同で打ち出したのが「インバウンド・サテライト」。これはWi2が14年12月から提供している訪日外国人向けの無償Wi-Fiサービス「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」アプリを活用したサービス。同アプリの利用情報をもとに、訪日外国人の位置情報データと、アクセンチュアのデータ分析基盤を組み合わせてビッグデータ化し、個人でも訪日外国人の動態や使用言語などの情報に基づく効果的なプロモーションが可能になるもの。全国20万か所で「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」を提供するWi2社長・大塚浩司氏は「顧客のニーズに応えたサービス」と語る。訪日外国人の動向を「見える化」して個人店の集客をもグッと簡単にできるという。
しかし、そもそも位置情報を活用したビッグデータ解析は、大企業向けのソリューションであるという「課題」があった。小売店などの中小企業に(ビッグデータ解析を)活用することはこれまでなかったのだ。「そこで、新しいユーザー体験=セルフ型マーケティングを作ろうということになった」と説明するのは、アクセンチュアのアナリティクス日本統括マネジング・ディレクターである工藤卓哉氏。膨大なデータのなかから国別のフィルタをかけることによって、たとえば、特定の日時に、特定の場所へ中国語を話せるスタッフを配置すれば、「爆買い」に対応することも可能になる。
「コンセプトは『誰でも手軽に安く』」とサービスの特徴を語るのは、Wi2副社長・南昇氏。その第1弾として、「インバウンド・レーダー」という、特定地域の訪日外国人の動きを誰でも手軽に見ることができる画面を提供した。地図上の任意エリアでの訪日外国人の動向や、ほかのエリアとの相関関係などが可視化される。気になる提供価格は、月額1,980円(税抜)で、現在、無料トライアルキャンペーンを実施している(16年1月末まで無償利用が可能)。また、来年サービス開始予定の第2弾、「情報配信サービス」では、「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」アプリに登録している訪日外国人向けの情報提供メールを配信するという。
増加する訪日外国人とのビジネスを、個人の“経験や勘”に頼ることなく、データ分析で変えていく世界が到来し始めるようだ。
■「インバウンド レーダー」サイト
http://inbound-satellite.jp/
※画像3人の並びは、左からWi2副社長・南昇氏、Wi2社長・大塚浩司氏、アクセンチュアのアナリティクス日本統括マネジング・ディレクター工藤卓哉氏