“アメリカ(本社)がなにをしてくれるのかを待つのではなく、君たちがアメリカ(本社)になにができるかを考えよ”という、まるでケネディ大統領就任演説のような密命が、アメリカンメジャー映画会社から世界各国の支社に下ったことがある。
自動車とともにアメリカを輝かせたハリウッド映画は、長年にわたるアイデアの枯渇で、逆さにしても鼻血も出なくなっていた。ハリウッド発の、この断末魔の悲鳴のような試みも、残念ながら実を結ばなかった。
新宿コマ劇場に隣接した新宿プラザ劇場が閉館した。コマ劇場より一足お先に、08年の年末を待たずに閉めた。ハリウッド映画には、もう巨大映画館を満員にする力はなく、ここ数年は大飯食らいで勝ち星の少ない相撲取りのような辱(はずかし)めを受けていた。
大きい映画館が無用の長物という声が主流だが、果たしてそうだろうか。映画の醍醐味は、見ず知らずの他人と真っ暗闇を共有するところにある。その闇は深ければ深いほどよく、空間は大きければ大きいほどいい。娯楽に危険が塗(まぶ)されていることは、大人なら知っていることだ。
生き馬の目を抜く歌舞伎町の、長らくランドマークだったコマスタジアムの裏手で、丁々発止のお商売を続けてきた、もつ焼き「カミヤ」でしばし休憩。純喫茶王城もいまやカラオケだしなあ、などと感傷に浸ってぼんやりしているわたしからも、びしばし注文をとる。さすがである。
銀座のテアトル東京、梅田のOS劇場、そして新宿プラザ劇場が日本を代表する巨大映画館だった。献杯。
予算1500円
東京都新宿区歌舞伎町1-11-3