今年を振り返り、まさに“サプライズ”的なメガヒットとなったのが、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹の処女作「火花」(文芸春秋)だった。
もともと、又吉は芸能界きっての読書家として知られ、過去にエッセーなどを多く執筆。12年4月には「別冊文芸春秋」に自伝的短編小説「そろそろ帰ろかな」を発表していた。そんな経緯もあり、1月発売の文芸誌「文学界」2月号(文芸春秋)に芸人の「僕」を主人公に、先輩芸人の再起と挫折を描いた400字詰め230枚の中編小説として掲載。すると、同誌は82年前の創刊以来、初の増刷となるなど人気に火が付き、3月に単行本が発売し増刷を重ねた。
人気のみならず、文学作品としても評価が高く、5月に選考会と発表が行われた、「第28回三島由紀夫賞」の候補作に。受賞は逃したものの、今度は「芥川賞」の候補作にノミネートされ、ついには芸人としては史上初めての栄冠を獲得。周囲に“火花特需”をもたらした。
「版元の文芸春秋は受賞作の全文を掲載した月刊誌『文芸春秋』がバカ売れしたり、同社のドル箱作家・村上春樹の売り上げをはるかにしのいだりでウハウハ。又吉の印税は基本的に所属の吉本興業に入るので吉本も大もうけ。相方の綾部祐二は又吉の“太鼓持ち”に徹してオファー増。芥川賞をW受賞した羽田圭介氏も『又吉じゃない方』として一躍注目を浴びテレビに引っ張りだことなった」(同)
結局、「火花」は220万部以上を売り上げ、映像化も決定。又吉は次回作に執筆に取り掛かっていることもあかしているのだが…。
「『なんであんなのに取らせたのか』という文壇のお偉方からの厳しい意見もある。一方、お笑い界の大御所からは『芸はまだまだなのに…』という声も。売れた分、やっかみも多く、次回作には相当なプレッシャーがかかるはず」(芸能記者)
次回作が大いに注目される。