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「この人にまいっちんぐ」多田文明氏(キャッチセールス評論家)

 先日、原作を担当した「マンガついていったらこうなった」(イースト・プレス刊)が発売された、キャッチセールス評論家の多田文明(43)。キャッチセールスの勧誘先に潜入するコツと、この“疑心暗鬼の時代”を乗り切る術(すべ)について、話を聞いた。

 「マンガついていったらこうなった」は、2003年に彩図社から出版された「キャッチセールス潜入ルポ〜ついていったらこうなった」をマンガ化したもの。コンビニでも発売中で、1冊500円(税込)だ。
 この本には「結婚相談所/著名活動ボランティア/絵画販売/デート商法/芸能プロダクション/ヒーリングサロン/手相/英会話スクール/ヘアケアアドバイス」の9項目が紹介されている。
 結婚相談所のメシの種は、独身男が抱く、入所さえすれば必ず結婚できるという“幻想”だという。
 「入って1カ月たっても相手が見つからない人に、まず結婚は無理。でも、それを相談所は言わないので延々と手数料を取られっぱなしです。相談所が流行したところで少子化問題は解決できっこない。独身男がカモにされるだけ」
 デート商法も以前は電話勧誘が主流だったが、最近では「オレオレ詐欺」の影響で激減している。
 「その一方で、出会い系サイトとの連動型が増えてますね。女性にメールを送ったら好意的なメールが返ってきたので、会ってみたら実はセールスだったというケースが目立ちます」
 “癒やし”の名目で高額な商品を売りつけるヒーリングサロン。現職警察官が霊感商法事件に関わったことでも世間の耳目を集めた。
 「勧誘より友達経由での参加が多いですね、癒やされる場所を紹介するからと。要はスピリチュアルブームに乗っかった霊感商法の場合が多い。しかし、被害者本人には宗教施設に通っているという認識はありません。ここがミソ。自分は癒やされに行ってるだけ、影響を受けてるだけ、そう洗脳されるんです。まさにカルト宗教の手口ですね」
 これは手相のケースでも同じ。個人でやっているようでも、実は下部のさらに下部組織だったりする。
 「大本にある組織が分からないようカムフラージュしてあるのです。勧誘者は直属の上司しか知らない。その上司からさらに上へと辛抱強く調べていったら、とある巨大宗教団体に行き着いたケースもあります」
 キャッチで生徒を集めているような英会話スクールは、存在そのものを疑うべきだと語る。
 「そもそも生徒をキャッチで集めなきゃいけないって、どんな学校ですか(笑)。神田外語学院が“客引き”して生徒を集めてますか?そういうことですよ。町場の英会話学校に専門学校的な感覚で通うのが間違い。要は学校が潰れるリスクを、生徒側が認識しているかどうかです」
 最後のヘアチェックだが、現在ではキャッチセールスは姿を消したそうだ。
 「都からチェックを受け、業界団体でちゃんとやろうということになって、キャッチによる客集めはなくなりましたね。それに最近ではカツラメーカー単体としてではなく、エステ業界と融合を図ったりして、変わってきているようです」
 しかし、どのようにしてキャッチセールスの懐に飛び込むのだろうか。
 「さっきも英会話教室の勧誘員と話をしてきたところです。まずは相手がアルバイトか正社員かを見抜くことですね。バイトなら話は抑えめにして、正社員なら本格的に追求します」
 見分け方は「事務所に行きましょう」と言って、勧誘員より先にスタスタ歩き出すこと。後ろから付いてくるようならバイト。ちょっと待って下さいと、前に立って案内するのは正社員だとか。
 「だって俺を先に歩かせるのは変でしょう。こっちは事務所の場所なんて知らないはずなのに(笑)」
 勧誘員が配るチラシやアンケートハガキも大切なアイテムだ。
 「ハガキは記入したら相手に渡すので、こちらの手許に残らない。そこでハガキに相手の名前をメモったりして自分の物にし、手許に残します。後で揉め事が起きたとき大切な証拠になりますから」
 特に相手がバイトの場合は、マニュアル通りに進めようとする。そこでイレギュラーな行動に出て、こちらがペースを握ることが大切なのだそうだ。
 「チラシに“キャンペーン中”って書いてある。ディズニーリゾートのチケットやら電子辞書やら、いろいろプレゼントしてくれるってある。でも、肝心の期間が書いてない。いつまでか尋ねたら“ウーン”なんて首ひねっている。“2週間ぐらいじゃない?”なんて助け船を出したら“そ、そうです!”(笑)。先方は盛んに“事務所へ”と誘うんですが、これでは話にならないので、後で電話すると言って別れました」
 最近では街頭でキャッチの姿を見かけることも少なくなったような気もする。
 「条例などで取り締まりが厳しくなりましたから、減っているのは事実。でも、まだキャッチは残ってます。昔は獲物を網にかけるように、あからさまに活動していたでしょう、最近では分散型になりました。警備員が見回らない午前中、一般客に紛れてやってます。一度、彼らの後を付けたことがあります。そしたら、4〜5人のキャッチが一カ所に隠れてました。顔を見れば分かります」
 最後に、キャッチセールスに引っかからないコツを聞いた。
 「相手の話を鵜呑みにしないこと。それと質問に正直に答えない。見ず知らずの人にプライベートを明かしたら、何に使われるか分かりません。悪用される怖れもありますよ」
 要は先を見ることが肝心。先を見れない人が引っかかるのだという。
 「その場で終わりかと思っても、実はまだ先がある場合がほとんど。向こうが続きを言い出してきたら、それを断ち切る勇気を持つことが大事です」
 最後はキャッチセールスの“のりしろ”について締めくくってもらった。
 「勧誘員は商品を売り込むための布石をいろいろ打ってきます。それを僕は“のりしろ”と呼んでます。それに引っかかると、事務所に行かざるを得なくなり、そこで“ああ言ったこう言った”と揚げ足を取られ、契約せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。こちらも契約書を目の前に突きつけられる前に、こころの中に“のりしろ”を作り、落ち着いて対応する心構えが必要です」

〈プロフィール〉
 ただ ふみあき 1965年3月31日生まれ、宮城県出身、日本大学法学部卒。2001年から雑誌「ダカーポ」(マガジンハウス社)で「誘われてフラフラ」の連載を担当。この経験を生かしてキャッチセールス評論家に。これまで潜入した勧誘先の数は60カ所以上で、あらゆる詐欺商法に精通。テレビやラジオにも多数出演しており、特に一連の著書を特番化したフジテレビのドキュメントバラエティー「ついていったらこうなった」は大反響を呼んだ。他に著書は「電話にでたらこぅなった!」(ミリオン出版)、「ついていったら、だまされる」(理論社)など。

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