この突然の発表に「なぜこのタイミングの開催なのか?」「どんなネタになるのか?」など、お笑いファンでなくともたくさんの疑問が思い浮かぶはずだ。そこで今回は2人にインタビューを敢行し、意気込みを聞いた。最後にはちょっとしたサプライズも……。じっくりご覧いただきたい。
ーー12年ぶりに単独ライブを開催するきっかけは何だったのでしょうか?
千原ジュニア(以下、ジュニア):去年9月に、僕が1人で『1P』というライブをやったんですけど、その時にせいじに何本か手伝ってもらったのもあって「来年2人でやろかぁ」という流れになった感じですね。
ーー今回タイトルを『赤いイス』にした理由は?
ジュニア:17年前にタイトルだけ決まっていて会場も押さえていた単独ライブが『赤いイス』で、僕がバイクで事故って頓挫したんですよ。そのことをふと思いだして「まぁそれでええか」みたいな。自分のことながらタイトルの意味をいまいち覚えてないんですよ。だから、その時とまた違った意味合いのライブができるかなと。
ーーせいじさんはどのタイミングで聞いたんですか?
千原せいじ(以下、せいじ):ジュニアから直接聞いたわけじゃなくて、マネージャーから「8月末ですわ」って聞いて。だから、やると決まった時に1発目の取材があったんですけど、やる場所すら知らなかったです。
ーー話を聞いて単独ライブをやる心構えができたというか。
せいじ:心構えというか……ライブはいつでもやりますよ! ストロングスタイルですから。
ーーやはり2人だけでコントをやるというのは意味合いが違うものですか?
ジュニア:ちょっと温度は高くなりますね。
せいじ:僕らいろいろなことしていますけど、もともと千原兄弟は「コント」ですからね。それがないと今がないので。
ーー現在ネタ作りの進行はどのような状況なのでしょうか?
ジュニア:いま種ができて、どの種がどんな芽をつけるか分からない感じです。この種を作るのがしんどいですね。それができればすぐなんですけどね。
ーーこれだけはやらないというネタのジャンルはありますか?
ジュニア:今しか分からないネタ……例えば悪質タックルのコントはやらないでしょうね。
ーー時事ネタや最近出てきた身近な流行り物には手を出さないと。
ジュニア:タイミングと場所さえ間違わなければ、ネタに「紀州のドンファン」を使ったらウケるんでしょうけど、それをコントに入れることはないですね。そもそもそういう発想にならないです。
ーー反対に大切にしていることは?
ジュニア:自分らくらいの年齢のおっさんが、金出して足を運んで観に来てもらって笑えるかどうか……ですかね。
ーー若手時代に2丁目劇場へ出演されていた頃から、目の前にいる女子高生の向こう側を見ているイメージは持ってらっしゃった?
ジュニア:ありましたね。「騙されへんぞ」みたいなね。
せいじ:だから何回か男だけのライブとかやったもんね。
ーーこの単独ライブで挑戦してみたいことはありますか?
せいじ:単独ライブはずっと挑戦ですよ!
ジュニア:お互い環境も変わって俺も結婚して子どももいるから、そういう意味では出来るか分からないですけど、例えば12年前の俺が下ネタやって笑えなかったのが、今やと笑えるかもしれへんし。出来ることは広がっていると思います。
ーー年齢的な部分もあるんですかね。
ジュニア:最近『ドキュメンタル』(Amazonプライムで配信中)に出ましたけど、ザコシ(ハリウッドザコシショウ)の向こうに、「双子の子どもがいんねんなぁ」とか思ったらめちゃくちゃオモロいんですよね。そういうところの面白さをやっと感じられるようになったのかなと。
ーー単独ライブをやるメリットって何ですか?
ジュニア:もうメリットはないでしょうね。デメリットだけです。金にもならへんし時間ばっかりとられて……でもそれでもやってしまうんですよ。頭が悪いんでしょうね。
せいじ:若返るというか、あの頃を思い出すというか。「そういえばこんな感じやったな」って思うのは緊張感も含め、精神衛生上に良いと思います。
ジュニア:まぁ終わった後の酒が美味いだけですね。昔は「これでお笑い界ひっくり返らしたらぁ」と思いながらやっていましたけど、「そんなことない」という絶望も知っていますし、これで何も変わらないことも知っています。でもやってしまうんですよね。
(インタビューおわり)
せいじは千原兄弟の原点を「コント」だと言い切り、ジュニアは落語、ソロライブ、テレビマンとのライブを開催するなど新しいことに挑戦し、それをコンビに還元している。そんな2人が作り上げる12年ぶりの単独公演を大いに期待したい。
最後に写真撮影をお願いすると、ジュニアはバイクで取材場所へ来ていたせいじに「ヘルメット被って撮ったら?」と提案。せいじが断ることなく装着すると、ジュニアはその個性的なヘルメットに大笑い。「記念に」と2人で自撮りをしていた。その後、ジュニアのインスタグラムにその写真を投稿。本当の意味での「千原兄弟」を垣間見たような瞬間であった。
(取材・文:浜瀬将樹)