海外では昔から4月1日が近づくと、当日に人々をあっと驚かせるべく念入りに仕込みを行う。
だが、中には仕込みがうまくいきすぎて皆が騙されてしまうケースも出てきている。
1962年3月29日、オランダのザントフォールト近くの浜辺を歩いていた男が、奇妙なものが砂浜にあるのを発見した。それはまるでイースター島のモアイを小さくしたような像だった。
人々は南太平洋からの海流に乗って流されてきたにちがいないと噂して、オランダのみならず海外でも記事が紹介された。そして、騒ぎを聞き付けた専門家が現場に急行して鑑定したところ、それが本物のイースター島の遺物に間違いないとの鑑定結果が出たのである。人々は珍しがって浜辺に足を運んだという。
しかし、4月1日の遅く、テレビのニュース担当者がモアイ像を発見した男にインタビューしたところ、衝撃の発言が飛び出した。なんとこのモアイ像は発見者の手作りだったのだ。目撃者はヘイエルダールのイースター島研究に触発されて、像を作って浜辺に置いたと告白したのである。本当ならば4月1日用のネタとされるはずだったのだが、思いの外早く注目されてしまったのだそうだ。
翌年、この人物はエイプリルフールで素晴らしいウソをついた人にオリジナルの賞と、モアイを象ったトロフィーを贈るイベントを考案。このイベントは本人が亡くなるまで開催され続けていたという。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所