4月28日に開催されたトークイベントでプロ野球審判長の友寄正人氏が明かしたところによると、開幕から4月22日までに「リクエスト」があった回数は50回。そのうち判定が変更されたのは18回で、変更率は36%だったそう。
また、リクエストが導入されたことにより、監督による抗議が激減。当初はビデオ確認による待機時間の長さが懸念されたが、却ってスピードアップにつながっている模様。また、審判にとっても間違いを素直に認めることができるため、ストレスが軽減されているようだ。
これまでのプロ野球界は、審判による判定がたびたび勝敗に影響してきた。おもなものは以下の通りだ。
1.1978年日本シリーズ第7戦 ヤクルトスワローズ対阪急ブレーブス
日本一を掛けた試合の6回裏、大杉勝男が足立光宏からレフトポール際に大飛球を放つ。レフト線審はホームランの判定。これに猛抗議したのが、阪急・上田利治監督。ファールだと猛烈に主張し、選手を引き上げさせてしまう。
ベンチに帰った上田監督は審判の交代を要求するなど、大激怒。結局コミッショナーが上田監督を説得し、1時間19分後に試合が再開された。なお当時放送されていたTVのスロービデオでもホームランか否かを判断することは難しく、現在もどちらであるかは不明だ。
2.1990年4月7日 巨人対ヤクルト戦
1990年の開幕戦、ヤクルト2点リードの8回裏、ランナーを置いて篠塚利夫(現・和典)が放った打球はライトポール際へ。明らかにファールと思われたが、大里晴信審判はホームランの判定。
この年から審判4人制となったことや、ポールの色が白だったことから、当時ベテランだった大里審判が見間違えた模様。当時の野球中継でははっきりとファールゾーンをボールが通過する様子が映っており、解説の長嶋茂雄氏と中畑清氏が絶句してしまった。
仮に「リクエスト」が存在していれば、覆っていたであろう。
3.2011年4月20日 阪神タイガース対読売ジャイアンツ
7回裏、ランナーを1塁3塁に置き、クレイグ・ブラゼルの打球はセカンドへの飛球。これをセカンドの脇谷亮太が不自然な形で追い、落球。地面のボールを素早く取り上げ、キャッチをアピール。塁審はアウトの判定を下してしまう。
テレビ中継のスローを見ると、ボールが地面に付く様子がはっきりと映る。阪神がリードしていたため当時の真弓明信監督は短時間で引き下がったが、その後逆転負けした。こちらもリクエストがあれば、覆っていたはずだ。
ちなみに試合後、脇谷がスローVTRについて「VTR?テレビが壊れているんじゃないですか?」とコメントし、大炎上した。
4.2015年9月12日 阪神タイガース対広島東洋カープ
延長12回表、田中広輔の放った打球はセンターのスタンドに入り、大きく跳ね返る。当時認められていたビデオ判定に委ねられることになったが、審判団はフェンス直撃の三塁打と判定。結局点が入らず、試合は引き分けに。
ところが後のビデオ検証で、客席側のワイヤーに当たり跳ね返っていたことが判明。セ・リーグは誤審を認めたが、試合結果は覆らず。結局この引き分けが尾を引き、0.5ゲーム差で阪神がクライマックスシリーズ進出。
仮にホームランでカープが勝っていた場合、クライマックスシリーズに出場していた可能性が高く、1つの誤審がシーズンの順位を決めてしまった。
いずれも間違った判定が試合の流れを変え、勝敗を決めた。観戦したファンはモヤモヤしたまま帰宅したはず。
「誤審も野球のうち」という考えもあるが、やはりビデオによる正確な判定が下されたほうがスッキリする。「リクエスト」が時代にあった制度であることは間違いないだろう。