「他の日本人メジャーリーガー、国内のFA取得選手にも影響が出そうです」(在京球団スタッフ)
大谷の代理人を務めるのは、大手代理人グループ・CAAに所属するネズ・バレロ氏。米球界でも敏腕で知られており、青木宣親、田澤純一の日本人選手も担当している。
「青木はメッツと再契約できなかった。バレロ氏は大谷との抱き合わせのような交渉も仕掛けてくるのではないか」(米国人ライター)
また、バレロ氏の登場と前後して、MLB公式サイトは今オフの去就が注目される上位選手25人を発表。1位はドジャースからFAになったダルビッシュ有だが、2位に大谷がランキングされていた。<メジャーに在籍していない選手では世界最高だろう>との寸評も見られたが、ダルビッシュ獲得には大金が掛かる。入札金、25歳以下の海外選手との契約における年俸等の上限制度が設けられたため、大谷のほうが“お得感”がある。
「ダルビッシュとの交渉は『6年1億4000万ドル(約160億円)』からスタートするようです」(前出・同)
「ダルビッシュと交渉できる米球団は、一部の金持ち球団だけ」の図式をさらに加速させるだろう。こんな見方もある。
「イチロー、岩隈も契約先を探しています。大谷との日本人コンビでジャパンマネーを引っ張り出そうと企てる米球団も現れるのではないか」(スポーツ紙記者)
日本国内ではオリックスの守護神・平野佳寿(33)が海外FA権を行使した。千葉ロッテ・涌井秀章(31)も「メジャー挑戦、叶わなければロッテ残留」を伝えており、埼玉西武・牧田和久(32)もポスティングシステムでの米球界挑戦となりそうだ。
「牧田はメジャー志望が強い。国内FA権しか持っていないが、球団はそれを行使された場合、対戦チームに牧田を奪われる危険性も察し、本人の意思を尊重する形でポスティングを認めてやろう、と」(前出・在京球団スタッフ)
アンダースロー・牧田の実力はWBCで証明済み。大谷獲得には米10球団以上が参戦すると見られるが、投手力を確実に補強したいとする米球団は、牧田との“堅実な交渉”に切り替えてくるかもしれない。
「WBCで好投した平野を評価する米スカウトは少なくありません。でも、大谷と牧田と同時期の米挑戦となったため、平野は3人のなかでいちばん最後になりそう」(選出・米国人ライター)
日本ハムも大谷という金看板を失う。怪物・清宮幸太郎の指名には成功したが、一軍戦力になるのは2、3年先の話。したがって、二刀流・大谷を喪失するため、投打ともに補強が必要となる。
「斎藤佑樹がクビを免れたのは、大谷のおかげ」(前出・スポーツ紙記者)
そんな皮肉も聞かれた。
“大谷ロス”の影響はチーム内にも及んでいたわけだ。国内FA市場に目を移せば、急展開で阪神・大和の動向が注目されてきた。内外野のどこを守らせても一流の守備力を持ち、ゴールデングラブ賞にも選ばれているが、チーム内ではレギュラーと見なされない現実に「移籍」を考え始めたという。阪神はこれまで残留条件を大幅に見直すとしている。
大谷の米挑戦が正式表明された同日、NPBの新コミッショナーに米投資ファンド『コールバーグ・クラビス・ロバーツ』の日本法人会長などを歴任した斎藤惇氏(78)が推されることも明らかになった。バブル崩壊期、産業再生機構社長も務めており、ダイエーのソフトバンクへの売却にも関わったマネーのスペシャリストだ。
その斎藤氏は財界にこんな格言を残しているそうだ。「謙虚な企業ほど生き残る。逆に自慢するようなところは落ちこぼれる」――。新コミッショナーの眼に、オフのマネー戦争はどう映っていくのだろうか。