「那須川天心対フロイド・メイウェザー・Jr」
誰がこんなカードを見られると思っただろうか。デビューからキック、MMAで31戦31勝と連勝街道を突っ走る“日本格闘技界の神童”と、史上初めて無敗で5階級制覇を達成し、デビューから50戦50勝の“世界ボクシング界のレジェンド”が平成最後の大晦日に拳を交える。まさに「夢」のカードだ。モハメド・アリ、マイク・タイソンに続く世界的なボクサーのRIZIN参戦が世界中に衝撃を与えるのは間違いない。
ファイトマネーが1試合100億円を超えると言われているメイウェザーが日本のリングに上がる姿を見るだけでも価値あることだが、対戦相手が天心というのも秀逸だ。RIZINは前回の天心対堀口恭司と同じく、出し惜しみなくベストなカードを切ってきた。凡戦に終わり、当時非難が殺到したアントニオ猪木対モハメド・アリの異種格闘技戦(1976年、日本武道館)を彷彿とさせるドリームカードではある。ただ、約10キロある体重差など、本番までに解決させるべき課題がないわけではない。
会見には榊原信行実行委員長、高田延彦統括本部長、ONE ENTERTAINMENTのブレッド・ジョンソン氏、メイウェザー、天心の両選手が出席した。
メイウェザーが「日本に戻って来れてうれしい。アメリカ以外の国で試合をするのは初めて。今までと違うことをしたかった」と参戦の動機を語った。「自分のスキルをアメリカ以外で披露してみたい。天心はアンビリーバブルなファイター。(初対面の印象は)グッドシェイプ。なかなかいい体型をしている」と天心の印象を口にした。
天心は「この話が来た時、『これを断ったら一生やることはない』と思ったので、受けました。ルールは何でもいい。向こうの土俵で闘ってもいいと思ってる」といつもの天心節を披露。これを聞いたメイウェザーが笑うと、天心は表情をこわばらせた。
榊原実行委員長はメイウェザーのファイトマネーについて聞かれると「PRIDEをUFCに売ったお金が残ってて、今回の手付け金にしました」と明かした。「これは日本とアメリカの大ゲンカ。果し合いをしたい。スペシャルスタンディングの異種格闘技戦。ウェイトは関係ない」と強調した。
続けて「これからルールはもめると思います。ただメイウェザーと天心の試合はやりますので。世界中にRIZINを広めてもらうチャンス。当日はもう間に合わないので、スタジアム仕様ではなく、アリーナ仕様で会場では3万人のお客様に楽しんでいただけたらと思います」と述べた。その他のカードも1週間以内に発表するという。
カード発表後、TEAM TEPPENの那須川弘幸会長に取材したところ「とにかくやるしかない」と気を引き締めていた。
ボクサー転向を視野に入れている天心にとって、来年マニー・パッキャオと“世紀の再戦”が噂されるメイウェザーとの試合は、間違いなく今後の財産になるはず。またこのカードが実現することで、大晦日の格闘技熱の再燃に向けた期待も寄せられる。なおメイウェザーは「これがRIZINでのスタート」とも話しており、継続参戦も視野に入れていることを明らかにしている。
取材・文・写真 / どら増田