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2011年『12球団ペナントレース総括』 エースのお値段! 巨人編

 タイトルを獲った。エースとしての逞しさも備わっていた。契約更改で何を訴えるのだろうか−−。

 内海哲也(29)、28試合登板で18勝5敗、防御率1.70。今季は『開幕投手』を東野峻に譲ったが、過去2回、その大役を務めている。昨年も2ケタ勝利を挙げたが、不振で中継ぎや二軍降格も辛酸もなめた。WBCメンバーに選出された経緯を指して原辰徳監督(53)に「ニセ侍」なる厳しい檄を飛ばされたこともあった。しかし、今季は違った。最多勝を中日・吉見と分け合い、防御率は2位。1年間、安定した成績を収めてきた。その内海の2011年の推定年俸は、1億2000万円。前年から約2000万円のダウン提示だった。チームは優勝を逃したが、大幅増の2億円前後が提示されるものと思われる。

 内海が初めて1億円の大台を突破した08年オフの契約更改でのこと。関係者によれば、交渉の席で球団側は「来年はエースとして存在感を示してほしい」と励ますと、間髪入れず、「生え抜きが少なくなっている。グライシンガーに頼るんじゃなく、僕が勝てるようにしたい」と返したそうだ。
 同年の成績は12勝8敗。1年間、ローテーションを守り抜いたが、「リーグワーストの与四球68」、中日戦0勝5敗。前年の最多脱三振のタイトルホルダーとしては物足りない内容だった。ローテーション投手として3年を務めた実績よりも、「チーム優勝の恩恵で大台突破」となったと言っていい。
 だが、このときの「グライシンガーに頼るのではなく」の言葉は意義深い。当時は外様・外国人選手がチームの中核を担っていた。その現状を改めたいと自らの発奮材料に変えただけではなく、実は「彼らと自分たち生え抜きの上がり幅の違い」に不満も抱いていたという。 それを口にしたことも何度かある。しかし、言葉に説得力がなかった。内海は『エース』として、それに相応しい成績を残したとき、「待遇改善を訴える」と決め、頑張ってきたのだ。
 「20代前半と比べ、真っ直ぐのスピードは落ちています。でも、ボールの勢い、スライダー、カットボールのキレは良くなりました」(プロ野球解説者の1人)
 4月20日の阪神戦、内海は先発をトーレスに譲った。首脳陣は「内海と阪神打線の相性が良くないこと」を懸念し、データの少ない新外国人投手を送ったのだが、内海はこの試合で2番手として登板させられた。前日の全体練習ではトーレスと同じメニューをこなす陽動作戦にも駆り出された。「信頼を勝ち取るには、まだまだ足らん!」という原監督の『檄』だろう。しかし、こういう扱いを受けると、大半の選手は折れてしまう。その意味では、内海は本当に「打たれ強い」と思う。

 07年対中日戦は4勝1敗だったが、翌08年は0勝5敗。阪神戦も得意にしていたが、次年以降は苦手にしてきた。相手も研究してくるのは当然だが、『得意』を早々と『苦手』にしてしまうのが弱点とも言える。今季はどの球団に対しても、そつなく勝ち星を挙げた。内海がエースの貫祿を付けるのは、来年もう1度、「どの球団からもそつなく…」をやってのけたときだろう。
 生え抜きの最多勝投手として、訴えたいことがいくつかあると聞いている。球団とケンカするつもりはないそうだが、生え抜きの待遇面等を話し合うとすれば、それなりの時間を要する。おそらく、一発更改とはいかないだろう。(スポーツライター・飯山満)

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